研究分担者 |
GEORG TCHOMA アイオワ州立大学, 化学科, 博士研究員(助手)
THERESE M. C アイオワ州立大学, 化学科, 教授
HELMUT TRIBU ベルリン自由大学化学科ハーン. マイトナー研究所太陽エネルギー変換研究所, 所長, 教授
相楽 隆正 (相樂 隆正) 横浜国立大学, 工学部, 助手 (20192594)
阿久津 秀雄 横浜国立大学, 工学部, 教授 (60029965)
TRIBUTSCH Helmut Berlin Free University, Germany, Professor (Hahn-Meitner Institu, Berlin)
COTTON Therese M. Iowa State University, U.S.A., Professor
TCHOMANOV Georg Iowa State University, U.S.A., Research Associate
GEORG Tchoum アイオワ州立大学, 化学科, 助手
HELMUT Tribu ベルリン自由大学, 化学科, 教授
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研究概要 |
バイオエレクトロニクスは,生体内で行なわれている高度な配向技術の規能性電子素子への応用を目的とするもので,生体内における電子伝達系,酵素・基質,抗体・抗原反応にみられる選択的な結合反応を利用した超微細な電子デバイスの形成が究極の目標である。我々が過去17年間に亘り研究の対象としてきたチトクロムc_3は,特異的な電極界面物性および電気物性を示すため,生体素子の材料として極めて有望である。本研究では,チトクロムc_3の物理化学的性質,チトクロムc_3固体膜の電気的および光学的物性,電極表面修飾剤を介して電極表面上に固定化されたチトクロム単分子層のキャラクタリゼーションを目的として国際共同研究を行ない,以下の成果を得た。 1.チトクロムc_3固体膜の電気物性と光物性 チトクロムc_3固体膜のホール移動度は,酸化状態,還元状態ともマイクロ波共鳴効果を用いた無端子測定法の検出限界以下であった。完全酸化状態のチトクロムc_3固体膜の抵抗率は,真空中で10^<13>Ωcmであり,白色光照射により減少した。しかし,マイクロ波共鳴反射法によって測定した電気伝導度に対する532nmのレーザー光照射の明確な効果はなかった。今後.より精密な測定を行なうために,均一かつ緻密なチトクロムc_3固体膜の作製方法を検討中である。 2.NMRによるチトクロムc_3の構造と電子移動過程の研究 チトクロムc_3の分子内ヘム間の電子移動速度は極めて速く,これがチトクロムc_3固体膜の特異な電気物性を発現させていると考えられる。この分子内電子移動を支配していると予想される8個のヒスチジン配位子およびπ共役系を形成しているフェニルアラニン残基NMRシグナルの帰属を行ない,これら残基の運動性等の性質をNMRによって研究する方法をほぼ確立できた。 3.チトクロムc_3の光電気化学 チトクロムc_3はソーレ帯に強い光吸収を示すので,半導体/溶液界面における励起色素としての機能の有無を調べた。酸化チタン電極においては光増感作用を確認することは出来なかったため,引き続き適切な界面構成を検討中である。 4.紫外・可視反射分光法によるトチクロム固定化電極の研究 従来,裸の金電極上に直接吸着したチトクロムc_3は,天然状態の酸化還元電位では反応し得ないと言われていたが,少なくとも吸着直後には,天然状態の酸化還元活性が保持されていることを高感度紫外・可視反射分光測定により初めて明らかにした。末端にカルボキシル基をもつチオール分子を修飾した金属電極上にチトクロムc_3を固定化することによって,チトクムロc_3の酸化還元電位と構造とを制御出来ることを高感度紫外・可視反射分光測定により初めて見い出した。 5.ラマン分光法によるチトクロム固定化電極の研究 電極表面修飾剤で修飾した銀電極に吸着したチトクロムcを共鳴ラマン効果を利用して選択的に観察することができた。裸の銀電極上に直接吸着したチトクロムcは6配位低スピン状態と5配位高スピン状態との混合状態をとるのに対し,電極表面修飾剤で修飾した銀電極上に吸着した場合は,溶液中に天然状態で存在するチトクロムcと同じ6配位低スピン状態のみをとることが分かった。
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