研究分担者 |
CHRISTIAN G. デンマークオーフス大学, 医学部, 臨床研究員
ETTORE APPEL 米国国立がん研究所, 主任研究員
JOOST J. OPP 米国国立がん研究所, 研究室主任
向田 直史 金沢大学, がん研究所, 助教授 (30182067)
笠原 忠 自治医科大学, 医学部, 助教授 (60049096)
村上 清史 金沢大学, がん研究所, 助教授 (90019878)
OPPENHEIM Joost J. Laboratory Chief, National Cancer Institute, USA
LARSEN Christian Clinical Staff Fellow, Aarhus University School of Medicine, DK
APPELLA Ettore Section Chief, National Cancer Institute, USA
LARSEN Chris オーフス大学, 医学部・皮膚科学, 研究員
APPELLA Etto 国立がん研究所(米国), 主任研究員
OPPENHEIM Jo 国立がん研究所(米国), 研究室主任
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研究概要 |
1987-1989年本研究代表者らは,米国National Cancer Instituteにて活性化ヒト末梢血単核球由来好中球,Tリンパ球,単球走化性サイトカインの精製ならびにそれらの遺伝子クローニングに成功した。好中球走化性因子とTリンパ球走化性因子はアミノ酸配列上同一であることが判明し,インターロイキン8(IL8)と命名した。単球走化性因子はIL8とアミノ酸配列上21%同一であり,単球活性化作用も有することよりmonocyte chemotactic and activating factor(MCAF)と命名した。両サイトカインは8kDaへパリン結合性で塩基性の強い白血球走化性サイトカイン(Chemokine)ファミリーに属する。本共同研究に於ては,IL8とMCAFの基礎ならびに前臨床実験として以下のような研究課題に取り組んだ。 1)IL8,MCAFの構造と活性中心の決定---ヒトIL8を大腸菌で大量発現の後精製し,NMRとX線結晶回析によりIL8の3次元構造モデルを作製した。その結果,IL8は向かい合う形で水素結合をとうして二量体を形成,本体は二重のS-S結合を持つ三重鎖のベータシート構造をとりC-末端側は完全なアルファヘリックス構造をとることが判明した。IL8/MCAFの欠失変異体,キメラ分子を遺伝子組み替え法により大腸菌ならびにCHOホ乳動物細胞で発現し白血球走化性活性と受容体結合性を検討した。その結果,活性中心/受容体結合特異性決定部位はIL8分子ではHis33を中心にした領域にあり,C-末端部位は分子の安定化に寄与することが判明した。 2)IL8,MCAF受容体の性状決定---ヒトIL8受容体は分子量60,000の糖蛋白で好中球上には20,000個/細胞表現されており,平衡定数は1nMと算定された。MCAF受容体は,分子量40,000で単核球上には13,000個/細胞表現されており,結合平衡定数は25nMと算定された。IL8受容体表現はIL8のみならずTNF,PMAなどによりdynamicに制御されており,また,MCAF受容体は非常に温度依存性の結合を示すことが解かった。IL8受容体cDNAは米国の他のグループによりクローニングされたが,我々はIL8受容体ファミリーに属する数個の新しいcDNAをクローニングした。 3)IL8遺伝子発現機構の解析---ヒトIL8cDNAのクローニングの後,種々の細胞が,IL1,TNF,enodotoxin,exotoxin,viralproteins,重金属,活性酸素発生物質など様々の刺激によりIL8を産生することを明確にした。また,IL8の産生が,glucocorticoid,vitamin D3,lipooxygenase inhibitors,FK506などにより抑制されることも明確にした。ヒトIL8染色体遺伝子をクローニングし,IL8遺伝子5′-上流域のIL8産生制御物質反応性エンハンサー/サプレッサーの性状を検索した。線維芽細胞,神経膠細胞では-94bpから-71bpに存在するC/EBP(NF-IL6)とNF-kB核蛋白結合部位が種々の刺激物質共通に反応するエンハンサーとして働き,Tリンパ球,肝細胞,胃癌細胞においては-126bpから-120bpに存在するAP-1領域と-80bpから-71bpに存在するNFkB核蛋白結合部位の相乗的作用によりIL8遺伝子の転写が亢進することがわかった。glucocorticoid,FK506などの産生抑制剤もこれらのIL8エンハンサー結合蛋白を修飾することによりIL8遺伝子転写を抑制していることもわかった。 4)IL8,MCAFの病態生理作用の確立ならびに臨床応用の可能性の検索---IL8がRA,炎症性大腸炎,皮膚乾癬症,腎炎,尿路感染症など種々のヒト炎症疾患で産生されることが判明しIL8測定が炎症の良いマーカーになることがわかった。IL8の急性炎症時の好中球浸潤に於ける本質的関与に関してウサギを用いて関節炎,皮膚炎,肺再潅流症候群モデルにて証明することができた。IL8,MCAFcDNA導入実験腫瘍にては有意な抗腫瘍効果を観た。現在,IL8関連サイトカイン遺伝子導入腫瘍の成着率,転移能について評価中である。MCAFは,in vitroにてはマウスマクロファージをprimingしてより強い抗腫瘍効果を示すことがわかった。MCAFはまた,マウス実験にて種々の細菌に対して前投与にて抗菌作用を有することが判明した。今のところIL8,MCAFの造血作用は証明できない。
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