研究分担者 |
M.L.DULDIG エル トルデイヒ オーストラリア, 南極局, 主任研究員
K.B. Fenton タスマニア大学, 名誉教授
A.G. Fenton タスマニア大学, 名誉教授
J.E. Humble タスマニア大学, 物理学科, 助教授
藤井 善次郎 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (10022724)
宗像 一起 信州大学, 理学部, 助手 (40221618)
安江 新一 信州大学, 理学部, 講師 (80020668)
DULDIG Marcus L. Australian Antarctic Division, Australia
FENTON Keith B. University of Tasmania, Australia
FENTON Arthur G. University of Tasmania, Australia
HUMBLE John E. Department of Physics, University of Tasmania, Australia
森下 伊三男 朝日大学, 経営学部, 助教授 (40148200)
DULDIG M.L. オーストラリア, 南極局, 主任研究員
FENTON K.B. タスマニア大学, 名誉教授
FENTON A.G. タスマニア大学, 名誉教授
HUMBLE J.E. タスマニア大学, 物理, 准教授
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研究概要 |
高エネルギー宇宙線の強度変化,特に恒星時異方性による太陽圏内外の電磁状態の研究は,有効かつ特異な分野として広く認められている。本研究は,〜10^<12>電子ボルトのエネルギー領域での宇宙線を対象にし,その恒星時異方性から特性的スケールにして約3〜5天文単位の太陽圏での大局磁場構造を明かにしようとする。特に,これまで松代地下観測(対応エネルギーにして〜10^<12>電子ボルト)により得られた異方性の南北非対称性をより明確にし,上記の目的を達成することを試みる。そのため,世界に先駆けて南北両半球での異方性の同時観測を提案し,本研究によりそれを実行しようとするものである。 そのため,南半球での観測を行うにあたり,これまで同じ分野で活発に研究しているタスマニア大学の宇宙線研究グループとの共同研究とした。両研究グループともそれぞれ研究費の補助を受けることができ,1991年から準備をはじめた。観測所として,北半球では信州大学の松代を,南半球ではライアポータ水力発電所を選び,新しく地下観測所を開設した。両観測所は地理的にほぼ共役点に位置し,またほぼ同じ地下の深さ(松代は220米水深相当で,ライアポータは154米水深相当の深さ)である。1991年12月からライアポータ地下観測所で観測を開始した。松代は1984年から既に観測が行われている。 ライアポータ地下観測所に設置された宇宙線計は,20m^2の上下2層のプラスチックシンチレター検出器からなる多方向ミューオン計である。さらに,両観測所はそれぞれの研究室から遠隔地にあることから,計測,制御,データ電送等は,機器をパーソナル・コンピュータで制御し公衆電話回線により両研究室からオンラインで結ばれている。観測は以後順調に続けられている。 1年間の観測データの予備的解析から次のことが分かった。 1.鉛直計での計測ミューオンの深さ依存は,他の深さの異なる地下観測(三郷,坂下,松代,ポアチナ)得られた値とコンシステントであり,154米水深相当にあっている。また,各方向計での観測計数率は計算値とよく一致している。 2.鉛直計で得られた1時間計数の揺らぎは,ポワッソン分布に従っており,観測の正常さを裏付けている。 3.大気圧変動(ただし,ホバートでの計測値)と計測ミューオン強度変化には相関が認められ(解析2968データに対して相関係数-0.4),効果係数は-0.04%hpと得られた。この値は同期間の松代の値とほぼ等しく,この大きさは上層気温を考慮した理論値ともよく一致している。 4.ライアポータでのミューオン強度の月平均値の年周変化には,松代と同様夏と冬に極大のある顕著な半年変 化が見られた。これは深い地下での高エネルギーミュオン強度変化に特有であり,上層大気気温の月平均値の年周変化から説明される。 5.太陽時,恒星時,反恒星時について日変化を予備的に解析した。太陽時日変化は0.035±0.022%,12.0±2.6hrで,かつ有意な系統的な年平均値のまわりの反時計動きがみられた。これは恒星時異方性の存在を示唆ししている。反恒星時日変化の振幅は小さく誤差とほぼ等しく,恒星時異方性の存在とコンシステントである。 6.恒星時日変化は0.057±0.014%,3.1±1.0hrと得られた。この値は松代での同期間の0.030±0.027%〜2.5hrと比べて位相はほぼ同じで,振幅は約2倍で,有為な南北非対称的異方性の存在をあらためて確認している。 7.更に,それぞれの時間軸における観測月変化を調べた。太陽時日変化は恒星時と反恒星時の年周変化で,反恒星時は恒星時と太陽時,また恒星時の月毎の変化は太陽時と反恒星時変化の年平均値の年周変化でよく説明される。これらは,いずれも観測の正常さを強く証拠ずける。 今後の観測から(短くとも11年間),南北非対称恒星時異方性の定量的確定が期待される。
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