研究分担者 |
GERBER R.G. サルフォード大学, 純粋応用物理学部, 教授
GRUNDY P.J. サルフォード大学, 純粋応用物理学部, 教授
鈴木 義茂 工業技術院, 電子技術総合研究所, 研究員
岩田 聡 名古屋大学, 工学部, 助教授 (60151742)
綱島 滋 名古屋大学, 工学部, 教授 (80023323)
松井 正顕 名古屋大学, 工学部, 教授 (90013531)
新庄 輝也 京都大学, 化学研究所, 教授 (70027043)
藤森 啓安 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005866)
R G Gerber サルフォード大学, 純粋・応用物理学部, 教授
P J Grundy サルフォード大学, 純粋・応用物理学部, 教授
安岡 弘志 (安田 弘志) 東京大学, 物性研究所, 教授 (50026027)
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研究概要 |
金属人工格子に関する研究は,当所の計画より広い展開を見ることとなり,予想した以上にさまざまな材料において有意義な成果を得ることができた。 第1番目は,光磁気記録用の媒体に関するもので,Co/PtやCo/Pd人工格子膜は,大きな垂直磁気異方性を示し,かつ将来の短波長光磁気記録に必要な短い波長域における磁気カ-回転角が大きいことから非常に有望な材料と見られている。本研究では,これらの膜の垂直磁気異方性の起源が磁歪の逆効果である程度説明できるのではないかと考え,これまでほとんど知られていなかった磁歪定数について詳細な測定と検討を行った。その結果,コバルトパラジウム系は,磁歪定数が極めて大きく,磁歪の効果で垂直異方性の原因がかなり説明できることが分かった。一方,プラチナ系は,磁歪定数が小さく,垂直異方性へのその効果は微小なものに止まっている。また、Pd/Co人工格子膜の構造の様々なモデルについて計算機シュミレーションによって反射X線回折のパターンを計算し、実験の結果と比較検討したところ、界面において数原子層の拡散が起きている可能性が大きいことが分かった。 第2番目に,コバルト超薄膜の磁気光学効果を調べる検討も行った。金で挟んだコバルト超薄膜は,コバルト層が0.8nm付近から垂直磁化状態となり垂直磁気異方性が誘導されることが分かった。その磁気光学カ-スペクトルは,2nm程度の膜では,ほとんどバルクの光学定数を用いて説明できたが,やはり0.6nm程度となるとバルクのものとはかなり異なったものとなる。これは,超薄膜状態のコバルトの電子状態がバルクのものとは,異なっているということを示唆している。 第3番目は,希土類遷移金属系の光磁気記録媒体に関するものである。希土類遷移金属系については,ブルーレーザに対応できる短波長記録媒体という観点から,ネオジウムを含む系の検討を詳細に行った。ネオジウムと遷移金属のアモルファス合金薄膜は短波長において非常に大きなカ-回転角を示すが,飽和磁化が大きくなってしまうことから垂直磁化膜を得ることができなかった。本研究では,多層構造にすることで垂直異方性を誘導させるともに,ネオジウムにカドリニウムを添加することによって飽和磁化を低減して非常に角型比の良い垂直磁化膜を得ることに成功した。また,磁気光学効果を最大にするために遷移金属層は,鉄コバルト合金とした。膜厚比等を最適化した結果,短波長において従来材料に比べ2倍近い性能指数を示す材料を開発することができた。また,光磁気記録においては,局所的にレーザ照射して熱を加えるため,この人工格子膜の熱的安定性についても検討を行った。その結果,飽和磁化の値は,希土類成分が酸化され始める300度程度までは十分安定であるが,磁気異方性については,その起源が多層構造にあるため,その構造が崩れ始める200度程度から急激に低下することが分かった。しかし,実用上必要な寿命は確保しているものと考えられる。 第4番目は,磁気ヘッド材料として重要な軟磁性膜に関するもので,Fe/FeCoZr人工格子膜が,等価的に非常に小さな結晶磁気異方性と磁歪定数を有し,その結果,非常に小さな保磁力と高い透磁率を示す材料の開発に成功した。また鉄系の材料を用いることでほとんど理論的に到達可能な範囲で最大の飽和磁束密度を持っている。多層構造としたことで周波数特性も非常に優れ,数メガヘルツ帯での使用が可能である。 第5番目は,巨大磁気抵抗効果を示す人工格子膜に関するもので,非常に磁界感度の高い材料の開発に成功した。これは,磁性層に結晶磁気異方性が小さく,磁歪定数がほとんどゼロの組成のFeNiCo合金を用いることによって磁性層を非常にソフトな状態として磁界感度の向上させたものである。 以上のように本研究では,日本側の研究分担者と連合王国・サルフォード大学グルンディ,ガーバー両教授と国際共同研究を行うことにより大きな成果が得られた。
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