研究分担者 |
YVES CRAMA University of Limburg, 経済学部, 準教授
ALEXANDER V. ロシア科学院, システム研究所, 上級研究員
ART LIESTMAN Simon Fraser University, 計算科学部, 教授
SLOWOMIR PIL Simon Fraser University, 計算科学部, 教授
TIKO KAMEDA Simon Fraser University, 計算科学部, 教授
山下 雅史 広島大学, 工学部, 教授 (00135419)
加藤 直樹 神戸商科大学, 管理科学部, 教授 (40145826)
大西 匡光 東北大学, 経済学部, 助教授 (10160566)
永持 仁 京都大学, 工学部, 助手 (70202231)
福島 雅夫 京都大学, 工学部, 助教授 (30089114)
KARZANOV Alexander V. Russian Academy of Science, system Institute. Senior Researcher
LIESTMAN Art Simon Fraser University. professor
HELL Pavol Simon Fraser University. Professor
PILARSKI Slowomir Simon Fraser University. Assistant Professor
KAMEDA Tiko Simon Fraser University. Professor
CRAMA Yves University of Limburg. Associate Professor
SLOWOMIR Pil Simon Fraser大学, 情報学部, 助教授
ART Liestman Simon Fraser大学, 情報学部, 準教授
POVOL Hell Simon Fraser大学, 情報学部, 教授
TIKO Kameda Simon Fraser大学, 情報学部, 教授
|
研究概要 |
本補助金の2年間の交付期間にわたり,カナダ国よりKameda教授(2回)およびPilarski助教授,さらにロシア国よりKarzanov教授を招へいし,またこちらからは茨木教授(3回),大西助手おび永持助手をカナダ国へ派遣し,データベースの管理・制御・回復のための分散アルゴリズムについて共同研究を行うことができた。得られた主な成果は以下のとおりである。 1.分散システムの相互排除メカニズムであるコテリーの研究。まず,コテリーの数学的性質がブール関数の劣双対性と自己双対性に密接に関連していることを明らかにし,ブール関数の理論を用いることにより,コテリーの最適性およびその構成法を見通しよく記述できることを示した。 つぎに,この結果を利用して,リング状のネットワークにおいて,構成要素の故障確率を考慮するとき 可用性を最大にするコテリーの構造を明らかにし,それらを求める効率良いアルゴリズムを与えた。なお,ブール代数的手法は,意味のあるすべてのコテリーを生成する目的にも有用であることから,その計算複雑さを含めて,研究は継続中である。 2.データベースシステムの並行処理制御に関する研究,これまで当研究グループが提案し,研究を進めてきた先読みスケジューラにおいて,より並行性を高める並行処理アルゴリズムを考案し,その理論的性質を明らかにした。なお,先読みスケジューラは分散データベースにおいて最もその特長を生かすことができると考えられるので,現在その可能性を詳しく調べている。すでに提案済の方式に加えて,並行性を高めるための工夫と実用上考慮すべきメカニズム上の制約を加味したアリゴリズムにまとめ上げたい。 3.グラフとネットワークの連結性に関する研究,分散システムはグラフあるいはネットワークとして表現されるが,ネットワーク中の通信客量の評価,各要素が故障確率としたときのネットワークの信頼度の評価などにおいて,ネットワークの連結度,あるいはそれと等価な慨念である最小カットの計算が求められる。これまで,連結度の計算には最大フローを求めるアルゴリズムに立脚したアプローチがとられていたが,それらとは全く異なるアイデァを用いて,しかも従来のものより高速なアルゴリズムを与えることに成功した。このアルゴリズムは,実用上もきわめて高速であり,従来のものに優ることが計算実験によってたしかめられている。また,ここに用いられた考え方は,ネットワークの他の性質を調べる目的にも有用であり,その一例としてグラフの3辺連結成分を求める新しいアルゴリズムを得ている。 4.非線形最適化に関する研究。分散システムの最適化をはかるとき,その構成要素の非線形性に注目すると,いわゆる非線形計画問題になる。この最適化のためにアルゴリズムについても従来から研究を行ってきたが,本研究の期間中に,より一般的な定式化である変分不等式に対して新しいアルゴリズムを与えた。また,問題がネットワーク構造をもつ場合の非線形最適化についても研究を進め,ニュートン法の改良など,計算実験を含めて有望な成果を得ている。この方面の研究も継続していきたい。 以上のように,本共同研究の結果,分散システムに関する一定の成果を得ることができた。その中には,従来にない新しい考え方が含まれているので,幸い国の内外から注目を得ているものもある。たとえば,コテリーのブール代数的理論について,オランダ国エラスムス大学のBioch教授は,それを利用することでコテリーの分辞についての新しい結果を得ており,アメリカ合衆国ラトガース大学のHammer教授のグループは,ブール関数の同定問題に我々の成果をとり入れている。また,ドイツ国ボン大学のFrank教授はグラフの連結度を求める我々のアルゴリズムの数学的性質に興味をもち,その拡張をはかっている。今後,可能ならばこれらの研究者との共同研究へと発展させたいと考えている。
|