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カオス現象とその工学関連性

研究課題

研究課題/領域番号 03044084
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関京都大学

研究代表者

上田 よし亮  京都大学, 工学部, 教授 (00025959)

研究分担者 TOMPSON J.M.  ロンドン大学, 教授
STEWART H.B.  ブルックヘブン国立研究所, 数学者
THOMPSON John M T  Dept. of Civil Eng., University College London (Professor)
研究期間 (年度) 1991
研究課題ステータス 完了 (1991年度)
配分額 *注記
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
キーワードダイナミカルシステム / 電力系統 / 來叉軌道法 / コレクタル引力圏境界 / 不確定結果を伴う分岐現象 / 船の転覆 / カオス的動揺 / 転覆の前兆
研究概要

2つの結合したスイング・ダイナミカルシステムを記述した非線形常微分方程式をディジタル計算を用い、力学系の幾何学理論を適用して研究した。これらの方程式系は2つの発電機を送電線を介して連絡させた、簡単な電力系統の動力学的安定問題を記述したものである。このような単純な系においては、運動の最終状態がカオス的となることは無い。すなわちカオス・アトラクタは存在しないけれども安定平衡点(通常の運転状態を表す)の引力圏境界がフラクタル構造を示す場合がある。このことは現実の運転状態を決定するのに密接に関連している。このような引力圏境界のフラクタル構造を解明するためには、高次元ダイナミカルシステムの安定多様体と不安定多様体の大域構造を把握しなければならない。現在研究中の簡単な電力系統モデルに対しても4次元空間内の解の大域構造を解明しなければならない。4次元空間において引力圏境を構成しうる不安定多様体を数値的に追跡する方法として、來叉軌道法がる。我々はこの手法を用いてフラクタル引力圏境界を定める不安定多様体のの根元集合を数値的に究明し次の成果を得た。すなわち、フラクタル引力圏境界上の任意の点の近傍には、相異なる鞍形不動点の入集合が無限に重なって寄り集まっていることとが明らかにされた。しかし、鞍形点の出集合はこれらの入集合と交差していないことも明かとなった。これはフラクタル構造が由来する理論的根拠の一つであるホモクリニック構造の存在を否定する結論であるため問題は更に複雑・困難さを顕した。そこで次にパラメ-タ(電力系統の運転状態に応じて決まる)を僅かに変化させた場合の大域解構造について検討したところ、フラクタル引力圏境界が出現するようなパラメ-タ領域では、パラメ-タ空間における当該現象発生領域自身もフラクタル構造を示していることを示唆するような結果が得られた。パラメ-タ空間におけるフラクタル性の検証は厖大な計算時間を要することもあり、今後の課題として残された。以上要するに、本研究課題は現実の電力系統を安定に運転するための限界がフラクタル性を示しうる事を明らかにしたが、この構造が由来する数理的問題は依然として未解決であり、今後の検討にまたねばならない状況である。
次に、我々が共同で取り組んでいる、不確定結果を伴う分岐現象の研究について述べる。ここ数年間の共同研究成果は一つはカオスアトラクタが安定性を喪失してカタストロフィックな分岐現象を起こしたときに、行き先が一義的に定まらず、複数個存在するアトラクタのうちの何れか一つに落ち着く場合があることを示したことである。問題としている系は確定系であるため、不確定性は分岐を起こさせる形態に依存することは言うまでもないが、カオスアトラクタのフラクタル性に呼応して不確定分岐の行き先は予測できない。この種の現象は非線形の単純な原型モデルにおいて生じることも明らかにした。この種の現象が工学的に関連している一例は、横波を受けた船のロ-リングが、船を転覆させる現象の発生メカニズムとなっていることである。このように、当該現象は広範囲にわたる工学系に普遍的に共通するものであり、電力系統の安定性喪失のみならず工学全分野との関連性は密接であると考えられる。
上記の分岐現象に関連する問題として船の安定化制御装置の動力学的挙動がある。この安定化制御装置は横波を受けてロ-リングする船の重心を、搖れによる変位角に応じて、傾きと反対側に移動させ振動を抑制せんとするものである。この制御装置は今世紀の初めに実用化されているが、制御系の動作に遅延時間が含まれるため、この遅延時間が災いして安定化装置が不安定を助長する場合のあることが報告されている。本研究では、このよよな遅延時間を含むダイナミカルシステムのシミュレ-ション実験を行い、制御系のゲインに対して種々の形態の動揺現象とそれらの間の分岐現象を考察検討した。その結果、転覆直前の動揺はカオス的であることが明かとなった。換言すれば、カオス的動揺は転覆の前兆と言えよう。

報告書

(1件)
  • 1991 研究成果報告書概要
  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] 上田 よし亮,則安 学,H.B.Stewart: "來叉軌道法による引力圏境の根元集合の解析" 電子情報通信学会非線形問題研究会資料. NLP91ー43. 45-52 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 上田 よし亮,三井 正,J.M.T.Thompson: "遅延時間を含む非線形系の分岐現象について" 電子情報通信学会非線形問題研究会資料. NLP91ー44. 53-59 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 上田 よし亮,三井 正,J.M.T.Thompson: "遅延時間を含む非線形系の初期関数問題" 1992年電子情報通信学会春季大学. 1-70 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Yoshisuke Ueda, Manabu Noriyasu and H. Bruce Stewart: "Analysis of Basic Sets on Basin Boundaries Using Straddle Orbit Method" IEICE Technical Report. 91-352. 45-52 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Toshisuke Ueda, Tadashi Mitsi and J. M. T. Thompson: "On Bifurcation Phenomena in a Nonlinear System with Delay Time" IEICE Technical Report. 91-353. 53-59 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1991 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Yoshisuke Ueda, Tadashi Mitsui and J. M. T. Thompson: "Initial Function Problem for a Nonlinear System with Delay Time" Proc. 1992 Spring Meeting of IEICE. 1-70 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1991 研究成果報告書概要

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公開日: 1991-04-01   更新日: 2016-04-21  

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