研究分担者 |
CHARLES F BU シカゴ大学, 医学部, 研究員
GRAEME I BEL シカゴ大学, 医学部, 教授
石田 均 京都大学, 医学部, 助手 (80212893)
津田 謹輔 京都大学, 教養部, 助教授 (10180001)
BELL Graeme I Department of Medicine and Biochemistry and Molecular Biology, University of Chi
BURANT Charles Department of Medicine and Biochemistry and Morecular Biology, University of Chi
BURANT Charl シカゴ大学, 医学部, 研究員
SEINO Susumu シカゴ大学, 医学部・千葉大学・医学部・準教授, 教授
BELL Graeme シカゴ大学, 医学部, 教授
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研究概要 |
我々は前年度に膵β細胞に発現するGLUT2はグルコースにより調節されており,正常β細胞では高グルコースによって発現は増大すること,グルコースに対する感受性の低下しているHIT細胞では高グルコースによりGLUT2の発現は増大せず,グルコースによるインスリン分泌も減弱することを明らかにし,或る条件下ではGLUT2がグルコースによるインスリン分泌を制御している可能性を示した。そこで本年度は自然発症イントリン非依存型糖尿病(NIDDM)のモデルである後藤-柿崎ラット(GKラット)を用いて膵β細胞におけるインスリン分泌とGLUT2の発現につき検討を行った。8週令のGKラットと対照として同週令のWistarラットを用いた。GKラットのad.libtum状態における血糖値は約300mg/dlとコントロール群の約150mg/dlに比し著明に上昇していた。つぎに,単離膵灌流標本,単離膵ラ氏島を作製してグルコースによるインスリン分泌を検討したところ,GKラットでは高グルコース刺激に対するインスリン分泌は著明に減弱していた。一方,アルギニン刺激によるインスリン分泌は対照との間に殆ど差は認められなかったので,GKラットではグルコースに対する選択的なインスリン分泌障害が存在し,日本人ヒトNIDDMと極めて類似した特徴を有していた。ついで単離ラ氏島よりグアジミンチオシアネート-セシウムクロライドを用いた超遠心分離法によりtotal RNAを抽出し,^<32>P-dCTPにより標識したGLUT2 cDNAをプローブとしてノザンブロッティング法によりGLUT2 mRNAの発現を検討したところ,対照の60〜70%へ減少しているのが認められた。さらに抗ラットGLUT2抗体を用いて免疫組織化学法により膵ラ氏島におけるGLUT2の蛋白レベルでの発現を検討したところ,GK,WistarラットともGLUT2はβ細胞にのみ発現しており,α,δ,pp細胞では発現は認められなかった。また,GKラットの膵β細砲では陽性率ならびに発現の強さは減弱していた。このようのGKラットではGLUT2の発現の低下とグルコースによるインスリン分泌の低下の存在が認められた。しかし,GLUT2はその糖輸送容量が非常に大きく,数十%の減少ではβ細胞へのグルコースの取り込みには影響しないと言われているので,この程度の減少がグルコースによるインスリン分泌の低下の原因であると断定することはできない。したがってGLUT2以外の因子についても検索を加える必要があると考えられる。 一方,GLUT2の構造遺伝子の異常はGLUT2の機能を大幅に低下させ,グルコースによるインスリン分泌を障害することが考えられる。そこで,遺伝子変異を簡便にスクリーニングするため,近年その方法が開発され,臨床応用されつつあるPCR-SSCP(Polymerase Chain Reaction-Single Stranded Conformation Polymorphism)法によってGLUT2の遺伝子変異の有無を検索した。ヒトGLUT2遺伝子について,それぞれのエクソンをはさむようにオリゴヌクレオチドをDNA合成機で作成し,これをプライマーとして用いた。各エクソンにより55〜68℃でアニーリングを行ない,増殖することにより152-270bpの一本のPCR産物を得た。PCR産物は制限酵素切断によるマッピングおよび,サンガー法による塩基配列決定を行ない,目的とする遺伝子産物であることを確認した。次に,NIDDM患者17名の患者白血球より抽出したゲノムDNAを^<32>P-dCTP存在下でPCRを施行した。PCR産物はホルムアミド存在下で熱変性により一本鎖とした後,5%ポリアクリルアミドゲルに泳動し,オートラジオグラフィーにより検出した。GLUT2の11エクソンのうち1から9について目的とするPCR産物を確認することができた。PCR-SSCP法によりセンス,アンチセンスと考えられる2本のバンドが確認できた。17名のNIDDMについてGLUT2のエクソン1から9については移動度の異なるバンドは検出できなかった。今回行ったPCR-SSCP法はGLUT2変異の検索に有用である。また,GLUT2エクソン1から9の異常がNIDDMの病因となる可能性は現在のところ低いことが示唆された。
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