研究分担者 |
J.M.J.FRECHE 米国, コーネル大学・化学科, 教授
L.L.NEEDHAM 米国, 公衆保健局・防疫センター, 室長
E.R.BARNHART 米国, 公衆保健局・防疫センター, 主任
L.R.ALEXANDE 米国, 公衆保健局・防疫センター, 主任
D.G.PATTERSO 米国, 公衆保健局・防疫センター, 室長
細矢 憲 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (00209248)
福西 興至 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (40027800)
寺部 茂 姫路工業大学, 理学部, 教授 (50115888)
荒木 長男 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (70028124)
FRECHET J.M.J. Cornell University
NEEDHAM L.L. Centers for Disease Control
BARNHART E.R. Centers for Disease Control
ALEXANDER L.R. Centers for Disease Control
PATTERSON D.G. Centers for Disease Control
BARNHART E.R 公衆保健局, 防疫センター, 研究員
ALEXANDER L. 公衆保健局, 防疫センター, 主任
PATTERSON D. 公衆保健局, 防疫センター, 室長
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研究概要 |
本共同研究においては,(1)水系溶媒中に希釈されて存在するPCB,ダイオキシンなど芳香族塩素化合物の疎水性固体表面への吸着濃縮と固体表面上吸着状態における光分解,(2)芳香族塩素化合物,光分解生成物などについての構造類似同族体の分離,分析,ならびに(3)血液中のダイオキシン,PCB,多環芳香族化合物などの環境汚染物質のガスクロマトグラフィー/マススペクトル(GC/MS)分析のための,血清試料の迅速な前処理法の開発という三領域において実験を行った。以下項目ごとに概要を記す。 1.水系廃液中のダイオキシンの回収と光分解 (1)アルキル基を結合して疎水性化したシリカゲルを石英管中に充填し,この中に微量のダイオキシンを含む水-アルコール混合液を流すことにより,ダイオキシンを疎水性固体表面に1000倍以上濃縮して回収できることを示した。 (2)紫外線ランプの照射より,固体表面のダイオキシンは約15分で完全に分解され,水溶性のクロロフェノール,カテコール類となった。 (3)固体表面のダイオキシンは,太陽光によっても容易に分解し,4日間で約99%が分解された。 (4)以上の結果から,微量のダイオキシンを含む水系廃液を,疎水性シリカを充填した石英管に連続的に流してダイオキシンを固体表面に濃縮し,これに紫外線あるいは太陽光を照射することにより常温,閉鎖系で連続的に光分解処理できることを示した。 2.ダイオキシン異性体の分離と構造決定 (1)電子供与性のピレニルエチル型(PYE)および電子吸引性のニトロフェニルエチル型あるいはニトロフェノキシプロピル型(NPE,NPO)逆相クロマトグラフィー充填剤を合成し,これらの充填剤が芳香族塩素化合物に対して正反対の溶出順を与えることを利用して,75種類の全ダイオキシンについて,分離を達成した。 (2)従来分離不可能で構造決定されていなかった12種類のダイオキシンを含めて,全ダイオキシン異性体混合物を分離し,さらに,PYE充填剤における電荷移動相互作用の大きさと,NPE,NPO充填剤におけるダイポール-ダイポール相互作用の大きさに基づいて全異性体の構造決定をすることができた。 (3)これにより毒性,発ガン性,催奇形性などの試験が,1個から8個の塩素によって置換された全ダイオキシン異性体について個別に可能となり,より正確な環境動態や生物学的効果の検討が可能となる。 3.浸透制限型充填剤による芳香族塩素化合物のGC/MS分析のための血清試料の迅速処理法の開発 (1)親水性の外表面と疎水性の大きな内表面をもつ浸透制限型逆相クロマトグラフィー充填剤を開発した。 (2)血清試料の除タンパク操作を迅速化,自動化するために,グラジエント溶出プロフイルの最適化を行った。 (3)これにより発ガン性や催奇形性において危惧の念をもたれている,ダイオキシン,コプラナPCBおよびベンツピレンの血液中レベル測定のためのGC/MS分析用試料調製工程を,従来の数日間から1時間以内に短縮することができた。 (4)PCBなどをスパイクした試料について本法による処理とGC/MS分析を行い,ppbレベルの試料について迅速処理が可能であることを実証した。 以上のような,PCB,ダイオキシン類の分離分析法の改良,標準試料の調製,および吸着分解法の開発は,社会的に大きな関心をもたれているこれらの環境汚染物質について,その環境および生物体における安定性,存在状態の正確な把握,ならびに汚染物質の分解処理法の開発を通じて,環境リスクの正当な評価と環境の改善に貢献するものと期得される。
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