研究課題/領域番号 |
03044096
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 (1993) 大阪大学 (1991-1992) |
研究代表者 |
吉川 寛 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (70019876)
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研究分担者 |
ALONSO Juan スペイン国立生物工学研究所
MESSER Walte マックスプランク研究所, 分子生物部, 教授
ATLUNG Tove デンマーク工科大学, 微生物学部, 助教授
RASUMUSSEN K デンマーク工科大学, 微生物学部, 教授
HANSEN Flemm デンマーク工科大学, 微生物学部, 教授
守家 成紀 大阪大学, 医学部, 助手 (40191051)
小笠原 直毅 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10110553)
HANSEN Flemming G. Technical University of Denmark, Professor
RASMUSSEN Knud V. Technical University of Denmark, Professor
FIRSHEIN Wil ウエスリアン大学, 分子生物学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1992年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1991年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | 染色体複製 / 枯草菌 / 大腸菌 / dnaA遺伝子 / oriCプラスミド |
研究概要 |
1.我々はdnaA遺伝子とその産物の認識配列が様々な細菌染色体の複製開始点領域に保存されていることを見いだした。本研究は、そうした成果を発展させ、枯草菌を中心とした我々の分子生物学的研究、大腸菌の遺伝細胞学的研究に優れたコペンハーゲンの研究、両細菌で複製開始を生化学的に解析しているベルリンの研究を一体化し、dnaA遺伝子産物と複製開始点中のその認識配列の相互作用を中心とする細菌染色体の複製開始制御の分子機構を大腸菌と枯草菌を比較しつつ明らかにすることを目的とした。 2.そのため、3年間の研究期間中に吉川寛をベルリン及びコペンハーゲンへ、小笠原直毅をコペンハーゲンへ3回、ベルリンへ1回、Alonso教授が転任したマドリードへ2回派遣し共同研究を推進した。また、コペンハーゲンよりHansen教授を2回、Atlung助教授及びRasumussen教授を1回、ベルリンよりはMesser教授を1回、Alonso教授を2回招へいし、研究交流を計るとともに、彼らの研究成果を日本の研究者に紹介した。 3.本研究による最大の成果は、コペンハーゲンのAtlung助教授及びHansen教授との共同研究により、枯草菌oriCプラスミドの単離に世界で初めて成功し、枯草菌oriCプラスミドはDnaA-boxを含む2個の制御配列を同時に必要とし、そのコピー数は非常に低いという、大腸菌と異なる性質を持つことを明らかにしたことである。 4.さらに、上述の結果を引き継ぎ、本共同研究の第2年度に分担者として参加した米国・Firshein教授との共同研究により枯草菌oriCプラスミドのin vitro複製系の構築に成功し、それを用いて枯草菌染色体oriCにおいては2個の制御配列のDnaA蛋白を介した相互作用が開始に必須であることを解明した。さらに、ベルリン・Messer博士とは、相互に大腸菌及び枯草菌のDnaA蛋白を交換するとともに、彼らが改良した大腸菌oriCプラスミドのin vitro複製系と我々が開発した枯草菌の系を比較検討し今後の改良点を検討した。 5.また、コペンハーゲンのRasumussen教授の協力により、小笠原は枯草菌の細胞周期のFlow Cytometerによる解析を試み、枯草菌においても複製開始のtimingが厳密に決定されており、dnaA、dnaB遺伝子産物がその決定に関与していることを明らかにした。この研究を通じてFlow Cytometerの有用性がわが国の研究者の間で認識され、わが国への装置導入の契機となった。 6.ベルリンのAlonso教授とは染色体と同様の形式で複製を行うプラスミドを染色体複製の調節機構の解析に応用する可能性を検討し、彼らが明らかにしたプラスミドの複製調節領域を枯草菌染色体に組み込み、増殖がdnaA遺伝子に依存しないあらたな変異株を作成する試みを進めている。今後その変異株を用いて、複製開始制御におけるDnaA蛋白の役割を細胞内でより詳細に解析する予定である。 7.また、Hansen教授はわが国において、我々が確立したPCR産物の塩基配列決定法を用いて、教授が単離・収集した大腸菌dnaA変異を抑制するRNAポリメラーゼ遺伝子の変異部位を明らかにした。さらに、国立遺伝学研究所石浜教授の協力により、そうした変異RNAポリメラーゼの精製とin vitroでの生化学的性質の変化の解析を行った。 8.このように本国際共同研究により多くの新しい研究成果が得られただけでなく、3年間の交流により幅広い密接な協力体制が作り出された。その協力体制は今後とも、細菌の染色体複製制御を中心とする細胞周期の制御機構の研究の発展に大きく寄与することが期待される。
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