研究分担者 |
顧 志健 中国科学院, 昆明植物研究所, 助教授
NGUEN Thoi N ベトナム, ニンジン研究生産センター, 所長
聶 瑞麟 中国科学院, 昆明植物研究所, 助教授
夏 麗芳 中国科学院, 昆明植物研究所, 教授
楊 崇仁 中国科学院, 昆明植物研究所, 教授
李 恒 中国科学院, 昆明植物研究所, 教授
呉 征鑑 中国科学院, 昆明植物研究所, 名誉教授
日詰 雅博 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (30116967)
荻沼 一男 高知女子大学, 保育短期大学部, 教授 (30106794)
田中 教之 帝京大学, 文学部, 助教授 (20100969)
近藤 勝彦 広島大学, 理学部, 教授 (00110817)
大谷 和弘 広島大学, 医学部, 助手 (20203820)
笠井 良次 広島大学, 医学部, 助教授 (10034018)
山崎 和男 広島大学, 医学部, 教授 (00034017)
WU Zhengyi Professor Emeritus, Kunming Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences
XIA Lifang Professor, Kunming Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences
GU Zhijian Associate Professor, Kunming Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences
NGUYEN Thoi ベトナムニンジン研究生産センター, 所長
季 恒 中国科学院, 昆明植物研究所, 教授
顧 志建 中国科学院, 昆明植物研究所, 講師
谷口 研至 広島大学, 理学部, 講師 (10163627)
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研究概要 |
化学分類学グループは主として次の6種について研究を行った。1.バラ科Rubus属:中国西南部に自生する本属甜葉懸鈎子の成分を詳細に検討し、構造の類似したジテルペン配糖体を多数単離し、それらの化学構造を決定した。それらは僅かの構造の相違でその味が甘味、苦味、無味と変化し、化学構造と生物活性の相関に関する貴重な基礎知見を得た。雲南省南部の西双版納で採集した同属植物3種から、数種のトリテルペン配糖体を単離・構造を決定した。2.ウリ科植物棒錘瓜:中国南部に分布する植物で、解熱、抗炎症の目的に使用される本植物の地上部より、数種の新規ダマラン型トリテルペン配糖体が得られ、その構造を明らかにした。オコチロール型側鎖を有するものの他、側鎖に6員環を持つ珍しい構造の化合物も含まれており、化学分類的に興味深い発見である。3.シソ科 Phlomis属:チベットに分布する2種の同属植物より、新規ジテルペン型化合物数種と、新規イリドイド型化合物数種を単離し、その化学構造を決定した。得られたジテルペン化合物は僅かな構造の差でその味が異なり、構造活性相関の新知見である。4.ユリ科〓黄精:中国で広く強壮や肺疾患治療の目的で薬用に用いられる黄精の1種である雲南地方特産の〓黄精より4種の新規ステロイドサポニンを単離し、化学構造を決定し、同属植物との差異を論ずる為の重要な知見を得た。5.ウコギ科フカノキ:ベトナムで民間薬として、抗炎症、肝臓病治療の目的で使用されている本植物の樹皮の成分検索を行い、12種のトリテルペン配糖体を単離しその化学構造を決定した。これらはいずれも同じ糖鎖を28位に有する6対のオレアナンとウルサン化合物であった。6.ベトナム人参:ベトナム中部山岳地帯に野生し、現地の小数民族の秘伝薬であり、最近新種として記載された本種の成分研究を行い、37種のサポニンを単離・構造決定した。そのうち、14種が未知物質であり、5種の新規アグリコンを含んでいた。この成分構成は、これまでの同属植物とは明らかに異なり、薬用人参と三七人参の中間の性質を有し、これらの間の進化、地理的分布、薬効を論ずる上で貴重な知見が得られた。7.雲南甘草:雲南地方に自生し、民間で甘草の代用品として用いられる本植物の化学成分研究を行ったところ、28種のオレアナン型トリテルペンサポニンを単離、構造決定した。これらはすべてグルクロナイド配糖体で、甘草との差異と類似点が注目される。 植物染色体研究グループは中国雲南省を中心に東アジアの常緑広葉樹林構成植物を,それぞれ専門の植物を選んで昆明植物研究所スタッフと共同して染色体研究を進めた.近藤が指導してきた中国側研究分担者顧と夏は雲南省に接する四川省南部にでかけ,ツバキ属植物の調査,材料採集を行ってきた.これらの標本と材料により,従来から言われてきた『トウツバキは六倍体(2n=90)』であることを覆し,二倍体(2n=30)と四倍体(2n=60)を発見した.これにより,トウツバキは独自の種内倍数性を展開して分化し,人為嗜好も加わって,雲南省には六倍体だけが残ったと考えるに至った.荻沼は,昆明植物研究所で栽培されているクルミ科,カエデ科,モチノキ科,ミズキ科,トウダイグサ科,クロウメモドキ科,トリセリア科,ツバキ科の染色体数の報告のない種を選び,観察をして,大収穫を得た.特に,主要構成員ツバキ科は5属5種の染色体数を調べ,ツバキ属とのかかわりについての多くの知見を得た.田中(教)は麗江方面の山地へ出かけ,林床にみられるユリ科55種を標本作成とともに,根端を採集し,染色体を検鏡した.また,種子を採集して,日本に持ち帰り,播種して研究材料として育成している.黒木は,タデ科ギシギシ属植物を調査,種子を採集して,日本に持ち帰った.原始的雌雄性における,構造的,数的性染色体の解明を急いでいる.日詰は平成3年度と4年度に採集したマツ科植物約30種の種子を発芽させて,蛍光染色法,インサイト・ハイブリダイゼーション法により,染色体の詳細な解明に全力を注いでいる.マツ科植物の染色体は全体に大形で,スタンダード・オルセイン染色法による分析では互いに類似した核型を示して分類,同定が困難であることが分かった.従って蛍光染色法,インサイト・ハイブリダイゼーション法は有効であり,これにより,東アジアの常緑広葉樹林構成樹種の起源と種間関係をさぐる重要な成果を十分にあげてきた.
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