研究課題/領域番号 |
03044106
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
井上 勲 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助教授 (80001973)
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研究分担者 |
BOURNAUD Rol パリXII大学, 理学部, 教授
SHIMAHARA Ta フランス国立中央研究所(CNRS), 神経分子生物学研究室, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 骨格筋細胞 / 興奮-収縮連関 / 膜内電荷移動 / Dihydropyridine受容体 / 分子進化 / 興奮ー収縮連関 / DHPリセプタ- / α_1サブユニット / セグメント4 |
研究概要 |
高等脊椎動物骨格筋の興奮-収縮連関においては、カルシウムイオン(Ca^<2+>)の細胞内への流入を必要としない。この機構解明は急務であり、われわれはこの国際共同研究の期間内に、筋膜内におけるシグナル伝達に関わる物理量を確定することを目指した。以下に研究結果とそれによって得られた知見を述べる。 1.正常マウス骨格筋細胞と、骨格筋興奮-収縮連関のみを欠いたマウス突然変異骨格筋細胞を用いて、Whole-cell voltage clampを適用し、Intramembrane Charge Movement(IMCH)を検出し、それらに対する各種の化学修飾剤の効果を調べた。正常筋細胞のIMCMはDihydropyridine(DHP)誘導体である。Nifedipineによって阻害される部分と阻害されない部分に分かれた。一方、突然変異マウス骨格筋細胞においては、Nifedipineによって阻害されるコンポーネントが欠如していた。この結果から、DHP感受性IMCMが骨格筋興奮-収縮連関機構の中心適役割りを担っていることが示唆された。 2.IMCMは膜電位変化に応じたT-管膜内の固定電荷の変位である。膜電位センサーである固定電化の荷電を中和することによってIMCMが影響を受けることが期待される。荷電の中和剤として脂溶性イオンを用いてIMCMと、興奮-収縮連関への影響を調べた。その結果、脂溶性陽イオンのみが、細胞外から与えたときのみ、その阻水性度と濃度に応じて、IMCMと筋小胞体からのCa^<2+>を阻害することが確められた。またこの阻害はDHP感受性IMCMの阻害を含むことも明らかになった。このことはDHP受容体タンパク質複合体の、膜外側表面近くの負荷電グループの中和によりシグナル伝達が阻害されることを示し、DHP感受性IMCMがシグナル伝達の中心機構であるとするわれわれの考えを支持する。 3.高等脊椎動物に対して、無脊椎動物骨格筋の収縮にはCa^<2+>の細胞内への流入が不可欠である。このことは動物進化の過程で高等脊椎動物骨格筋興奮-収縮連関機構の獲得という進化の段階があったに違いないことを意味する。この進化点を見つけ、その前後でいかなる物理量の変化が起きたかを調べることによってわれわれの考えを評価することができるはずである。われわれは動物進化系統樹に従ってどの段階で興奮-収縮連関の進化があったかを調べた。その結果頭索類であるナメクジウオ(Amphioxus)と無顎類であるヤツメウナギ(Lamprey)の間で進化が起こったことを発見した。それらの骨格筋細胞は似たような構造を持つにも関わらずAmphioxus筋細胞の収縮にはCa^<2+>流入が必要でLamprey筋細胞においては必要としない。さらにわれわれの予測通り、LampreyにおいてはDHP感受性IMCMが存在するがAmphioxusにおいてはDHP感受性IMCMを欠いていることが明らかになった。一方、Amphioxus骨格筋細胞のCa^<2+>電流は、DHPで阻害されることからDHP受容体は無脊椎動物骨格筋にも存在する。Amphioxusと同様の実験結果はさらに下等な軟体動物であるホタテガイfast twitch筋細胞からも得られた。これらにより、DHP受容体はその分子進化の段階でDHP感受性IMCMと関連したシグナル伝達機構を獲得したことが強く示唆された。 2年間の国際共同研究において、骨格筋興奮-収縮連関におけるT-管膜内のシグナル伝達機構はDHP感受性IMCMであることが明らかになった。また、分子進化の時系列からDHP感受性IMCMはCa^<2+>チャネルの動的性質とは無関係であることを示しており、DHP感受性はCa^<2+>チャネルのゲート電流であるとの考えを否定した。今後はこの進化の分子的解析を行うことで、骨格筋興奮-収縮連関の分子構造と機能の相関を明らかにできるものと期待している。
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