研究課題/領域番号 |
03044114
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野間 昭典 九州大学, 医学部, 教授 (00132738)
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研究分担者 |
ROLAND Kozlo オックスフォード大学, 生理学研究所, 助手
TREVOR Powel オックスフォード大学, 生理学研究所, 教授
尾野 恭一 九州大学, 医学部, 助手 (70185635)
KOZLOWSKI Ro オックスフォード大学, 生理学研究所, 助手
POWELL Trevo オックスフォード大学, 生理学研究所, 教授
光家 保 九州大学, 医学部, 講師 (40174065)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1991年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 心筋細胞 / Caフラックス / 細胞内Ca 濃度 / Caチャネル / Na / Ca交換機転 / Caged Ca / 膜電位固定実験 / 回転率 / 細胞内Ca濃度 / 細胞膜電流 / イオン輸送 |
研究概要 |
心筋での細胞膜を介するCaイオンの移動は、主にCaチャネルとNa/Ca交換機転によって決定される。膜の興奮はCaチャネルの一過性の開口をもたらし、外液から細胞内へCaイオンが流入し、これによって細胞の収縮が惹起される。CaイオンはNa/Ca交換機転を介して、Naイオン濃度勾配を利用して細胞外へ汲みだされる。我々は単離した心室筋細胞にCa指示薬であるIndo-1を負荷し、細胞内Caイオン濃度を測定し、同時にNa/Ca交換転機の発生する膜電流を膜電位固定法によって記録する実験を行い、Na/Ca交換機転の働きを解析した。さらに、紫外光照射によって瞬間的に破壊されCaイオンを放出するいわゆるCage d Compoundを使って、瞬間的に細胞内のCaイオン濃度を上昇させた際のNa/Ca交換電流の緩和過程を解析し、このイオン交換機転の回転速度を測定した。 まず、Ca指示薬を使った実験によって、細胞膜電位をいろいろなレベルに固定すると、細胞内のCaイオン濃度が変化するが、これは、Na/Ca交換機転によっていることを結論した。Na/Ca交換機転は3Naと1Caを交換するため、Naイオンの動きの方向に電流を運ぶ。この電荷を運ぶエネルギーとNaおよびCa濃度勾配によって決定されるエネルギーの釣合いで決定されるNa/Ca交換の平衡電位を決定できる。膜電位を変化すると、理論的にはこの電位がNa/Ca交換の平衡電位に一致するまで、イオンの交換が進行することになる。この仮説を検証するため、まず、膜電位を変化するとNa/Ca交換電位が活性化し、細胞内のCaイオン濃度が変化することを実際の記録から確認した。次に、Niイオンの投与によってNa/Ca交換機転を抑制し、同様な実験操作を行ったが、イオン濃度の変化はほとんど抑制されることを実証した。 Na/Ca交換機転の寄与を考えるためには、その膜上での分布密度とイオン交換速度を求めることが必要である。既に、この担体タンパクが同定されているが生理学的な実験では実際に機能している坦体について測定できるはずである。我々はNa/Ca交換に伴う膜電流を記録しているが、これは単体の分布密度と回転速度の積で決定されているのであるから、いずれかのパラメーターを決定すれば両者共決定することが出来る。回転速度に関する情報を得るため、細胞内のCa 濃度を瞬間的に変化し、これに伴うNa/Ca交換電流の緩和現象を測定した。Cage CaであるNitr-5、あるいはDM-nitrophenをパッチ電極内液に加え電極内液を細胞内液と交通させると、拡散によって、これらの物質が細胞内に一様に分布する。同時にこの電極によって単離心室筋細胞の膜電流を記録した。紫外光を1msec以内のパルス状に照射すると、細胞内Ca 濃度の瞬間的な上昇によって、Na/Ca交換電流は内向きに指数関数的に増大した。これがNa/Ca交換担体のいろいろな状態遷移によっているのであり単なる実験的人工産物でないことを確かめるため、以下の観察を行った。まず、温度依存性を確かめるため、36℃と26℃で電流活性化の時定数を測定したところ、Q_<10>の値は2.5-3.0の範囲にあった。膜電位を変えて測定すると過分極にともなって速度が速くなるのが観察された。これらの所見はいずれも電流緩和現象が単なる人工産物でなく、おそらくNa/Ca交換担体の状態遷移によることを支持している。 観察した緩和現象はイオンの担体への結合がきわめて速いと仮定すると、次のように説明出来る。瞬間的なCa 濃度の上昇によってCaの細胞外への移動が起こるが、これは最初に大きく、時間と供に減少するはずであり、実験で時間と供に増大した電流の増加を説明することが出来ない。おそらくこのステップは電気的に中性であると考えられる。続いて、担体は細胞外液のNaイオンを結合し、これを細胞内に運ぶが、この過程は時間と供に増大するはずであり、これにともなって電流が発生するとすれば、実験結果が説明出来る。一定の数字モデルによって、担体のイオン輸送回転速度と実験で確認した指数間数的な電流緩和現象の関係を求めると、回転速度は時定数の逆数で与えられる速度の1/4以下であることがわかった。これらのことから、Na/Ca交換の回転率は125/sec以下であることが結論された。Na/Ca交換担体の分布密度は1平方ミクロン当り、2000以上であると考えられる。
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