研究課題/領域番号 |
03044117
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
安田 克廣 長崎大学, 歯学部, 教授 (50013884)
安田 克広 長崎大学, 歯学部, 教授
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研究分担者 |
TENDELOO G.V アントワープ大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 教授
LANDUYT J.Va アントワープ大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 教授
田中 康弘 長崎大学, 歯学部, 助手 (10217086)
有働 公一 長崎大学, 歯学部, 助手 (60145266)
久恒 邦博 長崎大学, 歯学部, 助教授 (20037526)
VAN LANDUYT Joseph Professor, Center of High Voltage Electron Microscopy for Materials Research, Un
VAN TENDELOO Gustaah Professor, Center of High Voltage Electron Microscopy for Materials Research, Un
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研究期間 (年度) |
1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1991年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 歯科用金合金 / 規則格子変態 / AuCu II規則格子 / AuCu I規則格子 / 時効硬化 / X線回折 / 制限視野電子回折 / 高分解能電子顕鏡観察 |
研究概要 |
本研究計画は歯科用合金の生物学的安全性向上と機械的性質改善のために、合金結晶内に存在する、あるいは熱処理によって導入される長周期逆位相境界、双晶境界、異相境界などの異面構造を高分解能電子顕微鏡法により原子尺度で解析し、これらの界面構造の特徴と合金成分・組成との関係、とくに微量添加元素の役割について解明すること、これら界面の導入、消失を相変態の利用によって制御すること、合金中の微量有害成分をこれらの界面にトラップして無害化することの可能性について検討することを目的としている。具体的な実験は(1)AuCuーAg擬二元合金系のコヒ-レント相図の決定と異相界面、長周期逆位相境界、双晶境界などの界面構造の解析、(2)市販歯科用金合金および[(AuCu)_<0.86>Ag_<0.14>]_<1-x>-Pt_x擬二元合金系における時効硬化特性の検討とコヒ-レント相図の決定を行なった。得られた結果は以下の通りである。 (1)化学量論的組成のAuCu合金における規則化過程を焼入れ焼戻し時効および直接時効により比較検討したところ、約630Kを境にしてその上下の温度域で規則化過程に相違が見られた。この温度より高温側では不規則固溶体は準安定であり、規則化するまでに潜状期間があるのに対し、低温側では不規則相は不安定で直ちに規則化することからスピノ-ダルオ-ダリング温度が示唆された。 AuCuー1.5at.%AgおよびAuCuー3at.%Ag合金はAgーCu析出線の外側に存在するので不規則固溶体単相状態から直接、規則化を生ずるが、相律により不規則固溶相f.c.c.α_0相とAuCu II規則相の共存領域が示唆される。これを確認するために高分解能電子顕微鏡観察をおこなった。AuCu II規則相はマクロ双晶中に薄板状のミクロ双晶を含み、互いに交差している。交差の角度は規則格子の軸比c/a≒0.93のために90度にはならない。従って、交差するミクロ双晶の先端部分は大きなひずみ場を伴っており、その部分にα_0相の存在が認められた。AuCuー3at.%Ag合金ではα_0相を随伴するミクロ双晶の先端は彎曲しているのに対し、AuCuー1.5at.%Ag合金では先端部の彎曲は認められなかった。 AgーCu析出線の内側でスピノ-ダル線の外側の組成を持つAuCuー9at.%Ag合金の時効初期段階の規則化核の微細構造について解析し、Agーrich f.c.c.α_2相とAuCu II規則相の複合構造になっていることを明らかにした。AuCuーAg擬二元系合金で、規則格子相と共存する不規則f.c.c.相の形態はAg濃度の影響を強く受ける。すなわち、AgーCu析出線の外側の組成領域では時効により不規則固溶体から直接規則化し、共存するα_0相はAuCu II規則相のミクロ双晶の先端部にのみ検出されるのに対し、析出線の内側の組成の合金では規則化に先行して二相分離が析出またはスピノ-ダル分解によって生じた後、Cuーrich α_1相が規則化するためにAgーrich α_2相が残存して板状の規則相の間に共存する。合金中のAg濃度が少ない合金ではα_2相は薄板状に挟まれているが、Ag濃度の増加により薄板は厚さを増してブロック状になり、これに伴って微細構造は変化した。 (2)複雑な多元合金である市販歯科用白金加金の時効に伴って形成される板状のAuCu I規則相は正方晶化ひずみを解放するため、そのcー軸を直交する3方向に分布することはすでに報告したが、今回は交差する板状AuCu I規則相の間の界面構造を高分解能電子顕微鏡により解析し、ひずみ場の導入、解放の機構を検討した。 市販合金には未公表成分があるため完全な解析は不可能であるため、[(AuCu)_<0.86>Ag_<0.14>]_<1-x>-Pt_x擬二元系合金を作製し、時効硬化特性と相変態過程に対するPt濃度の影響について検討した。長周期AuCu II規則相はPt濃度0.2at.%では603K〜623Kの温度範囲で検出されたが、Pt濃度の増加により形成されなくなることが判った。一方、AuCu I規則化の臨界温度はPt濃度の増加に伴って上昇し、Pt濃度0では約573KであったがPt濃度3at.%では823Kに達した。そして、この組成範囲までのコヒ-レント相図を作成した。本系合金の時効硬化過程はPt濃度の増加に伴って促進されたが、硬化率は低下することが明かになった。
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