社会福祉制度と価値に関する共同研究

• 研究課題/領域番号: 03044122
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 大阪府立大学
• 研究代表者: 右田 紀久恵 大阪府立大学, 社会福祉学部, 教授 (30071210)
• 研究分担者: 泉 千勢 大阪府立大学, 社会福祉学部, 講師 (10071218) ; 藤岡 純一 高知大学, 経済学部, 助教授 (70165356) ; 橋本 義郎 帝国女子短期大学, 幼児教育科, 講師 (30156301) ; 北野 誠一 桃山学院大学, 社会学部, 助教授 (60186252) ; 沢田 清方 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教授 (60226066) ; 定藤 丈弘 大阪府立大学, 社会福祉学部, 助教授 (30071921) ; 牧里 毎治 大阪府立大学, 社会福祉学部, 助教授 (40113344) ; 井岡 勉 同志社大学, 文学部, 教授 (80066240) ; 土井 洋一 大阪府立大学, 社会福祉学部, 助教授 (20054661) ; 永岡 正己 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教授 (20121486) ; 高島 進 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (50085940) ; 岡田 藤太郎 大阪地域福祉サービス研究所, 所長 ; WALZ Thomas Department of Social Work, Iowa Universit, 教授 ; SHARMA Satis Department of Social Work, Nevada Univers, 教授 ; BACKMAN Gay Department of Social Policy, Åbo Academy, 教授 ; SWEDNER Hara Department of Social Work, Gothenburg Uni, 教授
• 研究期間 (年度): 1991
• 研究課題ステータス: 完了 (1991年度)
• 配分額: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円); 1991年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
• キーワード: 社会福祉的価値観 / ノ-マリゼ-ション / 機会平等理念 / 社会福祉制度 / 社会福祉専門職業 / ソ-シャル・ワ-カ- / 社会福祉発達史 / 家族

研究概要

本研究は日本、北欧諸国、米国という主要な先進三地域における社会福祉の基本的価値観と主要な社会福祉制度の生成過程や構造及び社会福祉の専門職業に関する国際比較研究を行なうことを目的としており、そのために次のような研究の柱を立てている。1.三地域に社会福祉の基本思想を抽出し、それらの形成要因となる理念や文化、社会観などを検討し、三地域に共通する思想的基盤とおのおのの独自的な価値観を考察すること。2.三地域の社会的経済的発展との関連における社会福祉制度の生成過程を究明しながら、制度成立の背景となる価値観を考察する一方、今日の主要な社会福祉制度の分類とそれらの構造、機能を比較すること。3.三地域における社会福祉の専門職業の発展過程とその現状の実態分析を行って、専門職制度の比較研究を行うこと。これらの研究テ-マを追求するために、今年度は、(1)各国を訪問して現地の資料収集や研究踏査を行うこと、(2)三地域の国際研究会議を開催し、三地域の社会福祉の価値体系、その歴史的状況を中心に研究協議すること、(3)国際会議で共通研究枠組、研究の進め方を確認した後、社会福祉の基本的価値観の発展過程についての歴史研究を深めること、(4)基本的な価値観に関する三地域の意識調査を行うため、調査項目や調査方法を具体的に検討すること、を計画し実施した。
まず(1)では、米国のスウェ-デンを訪問調査した。米国では比較地域に一つであるアイオワ州と福祉先進州であるカリフォルニア州の社会福祉制度、特に障害者福祉の制度とそれに影響を与えている基本的な価値観、自立生活の理念、機会平等の理念などに関する研究資料や文献を収集した。スウェ-デンでは同国の調査予定地の二都市を訪問して、各市の地理的・歴史的条件や福祉制度を調査する一方、同国の基本的価値観である平等、社会連帯、ノ-マリゼ-ション理念などの研究資料を収集した。(2)では、8月下旬に日本で三地域の国際会議を開催した。日本側からは、日本の福祉制度に大きな影響力をもつ家族扶養とその価値観について、特に障害者福祉における公的扶養と家族との関係を中心に報告する一方、社会福祉の処遇理念の形成に影響力をもつ家庭学校の処遇理念とその価値体系を発表した。米国からは、社会福祉サ-ビスに関する共通枠組の検討と、米国の福祉制度の背景となる価値体系として、自由主義、機会平等理念、ソ-シャル・ワ-クの価値観などの報告がなされた。北欧諸国からは、主に共同研究の基本的枠組についての提案がなされた。まず1850年以降今日までの歴史に注目し、主要な福祉制度とその背景にある価値観、福祉及び保健医療職の発展状況及び、社会福祉的価値観に関する意識調査の枠組について報告された。さらに、社会福祉活動についての6つの次元の基本的枠組が提示された後、全体で協議し、今後の研究計画を検討した。(3)国際会議の成果を踏まえて、わが国として社会福祉の歴史的枠組を考察した。具体的には社会福祉の発展を、個人の自立に対する捉え方の相違という観点から、前近代、近代、現代という三段階に区分し、各段階における特徴的な社会経済構造と社会福祉の救済理念及び救済形態を明らかにした。また、1850年代以降における日本の社会福祉と保健医療の専門職やマンパワ-の発展状況及び、それらと今日の専門職やマンパワ-の状況について検討を行いつつある。さらに(4)では、社会福祉の価値観に関する意識調査の基本的枠組の詳細について検討した。まず、28項目のフェ-ス・シ-トを作成した後、価値観を問う項目として、(1)競争と援助の関係、(2)利己主義と理他主義の関係、(3)家族主義、(4)伝統主義、(5)自然と人間の関係、(6)冒険心、(7)対処能力、(8)状況判断能力、(9)将来の満足度、(10)これまでの人生の満足度、(11)タイプ行動、(12)基本的人権、(13)人権問題への個人的対応行動、を作成した。
以上が今年度の研究実績であるが、次年度はまず他国と調査項目の調整をした後、三地域でそれぞれ予備調査を実施し、その結果と歴史及び専門職業研究の成果を、8月にフィンランドで開催する国際会議で相互に検討する予定であり、その後本調査を実施してそれらのまとめを研究報告書として刊行することを目指している。