研究課題/領域番号 |
03044163
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
村上 康文 理化学研究所, ジーンバンク室, 研究員 (90200279)
|
研究分担者 |
HURWITZ Jera スローンケタリング記念癌センター, 分子生物学部, 教授
浴 俊彦 理化学研究所, ジーンバンク室, 研究員
|
研究期間 (年度) |
1991
|
研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
|
配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1991年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
|
キーワード | 紫外線照射 / 細胞同調 / DNA複製 / 複製開始 / 伸長反応 / M期同調 / レプリコン / 動物細胞 |
研究概要 |
(1)本研究の目的 本研究は、真核細胞生物のDNA複製開始制御機構に関する基礎的な知見を得ることを目的として実施した。具体的には、DNA複製の開始領域を特異的に単離する方法を開発し、複製開始領域を単離し、単離された領域について多面的な解析を加え、とりわけ、そのような領域が、酵母でみられるような、ARS(autonomous replication sequence)としての活性を有するかどうか,また、その領域を含むプラスミドDNAが、例えば、SV40DNAが複製するような条件下でin vitroで複製するかどうか似ついて検討する事を目的としている。また、単離された領域にどの様な共通性があるかどうか情報科学的な解析を加え、また、こうして得られた複製開始点を含むプラスミドDNAを鋳型としたin vitroのDNA複成の構築をめざす。 (2)方法と結果 酵母では、複製開始点としての活性を持つ領域がすでに単離され、人工染色体(yeast artificial chromosome,YAC)が構築され、ヒトゲノム解析などの分野で広く用いられている。一方、哺乳類細胞においては一点の複製開始領域が存在するかどうか多様な解析がなされているが、結論はまだ定まっていない。また、これまでに、行われたARS活性を指標とした複製開始点のクロ-ニングの試みは必ずしも成功しているとはいえない。そこで、本研究では、DNA複製領域の特異的なクロ-ニングの方法を確立することを最初の目標として実験を行なった。 複製開始領域を単離するために、本研究では、細胞におけるDNA合成反応の伸長反応を特異的に阻害する方法について検討し、DNA複製反応を複製開始点付近の合成後に終止させる条件を見出だすことを試みた。伸長反応の阻害の方法としては、ヂデオキシヌクレオチドを含むDNA合成阻害剤・エメチン・紫外線などについて検討した。対数増殖期の細胞におけるDNA合成能に与えるこれらの阻害剤などの影響を検討したところ、紫外線照射によるDNA合成反応の阻害効果が最も高く、また、再現性の良い結果が得られた。次に、新生鎖長の定量法について検討した。従来、新生鎖長の定量法としてはアルカリ庶糖密度勾配遠心法が多用されてきているが、ここでは、より詳細な解析が可能な、アルカリアガロ-スゲルによる電気泳動法を用いて解析を行なった。また、紫外線照射を行なった後には修復反応によるDNA鎖の切断が起きることが考えられ、そのために申請鎖長が実際より短くなって観察される可能性が考えられた。そこで、紫外線照射によるDNA障害の修復機構に欠損を持ち、ピリミジンダイマ-の切り出し反応が殆ど見られない色素性乾皮症の細胞とHeLa細胞の両方を用いて、実験を行なった。その結果、紫外線照射により、照射量に応じて新生短鎖DNAの畜積が見られ、伸長反応の阻害が観察された。次に、DNA合成期の極初期に複製されるレプリコンの複製開始点の単離をめざして細胞同調系の検討を行なった。細胞をM期に同調した後、mitoticーshakeーoffーmethodにより、分裂期の細胞を収集し、細胞を洗浄した後、DNA合成能を経時的に測定した。その結果、細胞のDNA合成反応は、同調解除後6時間以降で鋭く立ち上がり、細胞周期のそろった集団がえられることが示された。 さらに、同調した細胞集団に対して紫外線を照射し、DNA合成の伸長反応が殆ど進まない条件下で細胞にBUdRを取り込ませ、複製開始点付近の新生鎖のみを標識しクロ-ニングする方法について現在検討を加えている。 (3)まとめと今後の方針 細胞同調の手法並びに紫外線照射による伸長反応阻害法を組み合わせることにより、複製開始点付近の新生鎖のみを標識する方法をほぼ確立できた。今後は、この方法で複製開始領域をクロ-ニングし単離された領域について詳細な解析を加えてゆきたい。
|