本研究の目的の第一は、原子衝突に関する理論的手法の比較検討である。島村は、ダラム大学マッキャン博士らと、イオン衝突、特に高エネルギ-におけるそれについて、かねてより諸理論間の比較検討を行っていたが、それのとりまとめを行い、論文にまとめた。市川は、ラザフォ-ド研究所で開かれた原子衝突デ-タの評価検討のための会合に出席し、特に電子と原子・イオンとの衝突について、これまでの理論的手法と比較検討を行い、それぞれの妥当性の吟味を行った。これらの成果は、今後のこの分野の研究の指針となるとともに、今後の日英共同研究の進め方にも反映される。本研究の第二の目的は、原子衝突理論の新しい衝突系・衝突過程への拡張である。原は、ノッティンガム大のア-マ-博士と共にミュ-粒子を含む原子過程の研究を行い、その成果をまとめた。島村は、原子衝突における精密計算手法の一つであるR行列法を、分子解離を含む過程に応用することをダ-ズベリ-研のノ-ブル博士らと研究し、一般的な定式化に成功した。市川は、ロンドン大の研究者らと、電磁場中における原子衝突過程を扱う理論について、今後の共同研究の可能性について討議した。これらの研究は引き続き今後の日英共同研究のテ-マとして実行される予定である。
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