研究課題/領域番号 |
03045019
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中林 宣男 東京医科歯科大学, 医用器材研究所・有機材料部門, 教授 (30014020)
|
研究分担者 |
鄭 剛 北京医科大学, 口腔医学院, 工程師
王 同 北京医科大学, 口腔医学院, 教授
徐 恒昌 北京医科大学, 口腔医学院, 教授
渡辺 昭彦 医用器材研究所, 有機材料部門, 助手 (30126263)
石原 一彦 医用器材研究所, 有機材料部門, 助教授 (90193341)
XU Heng Chang Professor, Stomatology Colle, Beijing Med Univ
WANG Ton Professor, Stomatology Colle, Beijing Med Univ
ZHENG Gang Lecturer, Stomatology Colle, Beijing Med Univ
|
研究期間 (年度) |
1991 – 1993
|
研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
|
配分額 *注記 |
5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
1993年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1992年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1991年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
|
キーワード | 歯科用接着剤 / 含浸 / モノマー / 樹脂含浸象牙質 / 象牙質 / メタクリレート / 接着 / 安定性 / 歯科接着剤 / 浸透性 / ハイブリッド層 / モノマ- / メタクリレ-ト |
研究概要 |
本研究は、硬組織の疾病に対する新しい治療、予防法を提供すべく、新規な高分子材料の分子設計及び機能評価を目的とした。すなわち、硬組織内へのモノマーの浸透、拡散を促進し、なおかつ様々な修復物に対しても接着可能な組成物を調合し、これを用いてモノマーを硬組織内で重合、硬化させるという本研究代表者が考案した考え方により、合成高分子と生体組織及び補綴物との結合を図ると共に、硬組織と合成高分子の界面を複合化により強化できることを明らかにした。特に本年度はこれまでに北京医科大学との国際学術大学間協力研究において明らかにした成果をまとめ、生体適合性モノマーの合成、機能評価及び硬組織機能制御に活用することを推進した。具体的には以下のとうりである。 1.モノマー拡散促進化合物の合成及びこれを含むレジン組成物の作成と評価 モノマー拡散促進化合物として分子内に親水基と疎水基を有するメタクリル酸エステルを、親水基にジカルボキシル基、リン酸及び水酸基を選択して合成した。合成した化合物をトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)に溶解し、可視光線重合型触媒を利用して重合硬化させる、歯質接着性ライナーを調製し、その機能評価を行なう。特に今日まで不可能とされてきた研削象牙質への接着可能な組成物を見いだした。引っ張り試験後の接着試料のSEM(現有設備)観察、接着界面のTEM(現有設備)観察などを行ない、表面脱灰象牙質に対するメタクリル酸メチル(MMA)-トリ‐n‐ブチルボラン(TBB)レジン(MMA-TBB系レジン)による接着メカニズムと研削象牙質への光重合型ボンディング材によるそれを比較した。また、これまで抜去牛歯では得られなかった接着の長期安定性についても調べた。 2.接着性の評価と複合体の構造解析 硬組織として牛歯あるいは人歯を用い、これらの組織に対する光重合型ボンディング材あるいはMMA-TBB系レジンを接着させた。この硬化したレジンと歯質の界面に新たに生成する組織と合成高分子の複合体をSEM、TEMあるいはX線光電子分光計により解析し、複合体形成に与えるモノマー拡散促進化合物の機能を明らかにした。 3.人的交流について 本年度は東京医科歯科大学側から石原助教授が北京(93年10月)に行き、新しい歯科用モノマーの合成及び構造確認法についての実験的手法を示したほか、北京医科大学から徐教授及び鄭講師が来日(93年11月)し、電子顕微鏡(SEM、TEM)による被着体の観察法についての情報交換を行なった。さらに、徐教授及び鄭講師は本研究の成果を日本バイオマテリアル学会にて口頭発表した。 本研究により次のことが明かとなった。 本学術研究は、人工臓器の使用において必ず問題となる生体と人工物の結合に関して、モノマーを生体組織中に積極的に取り込ませ、その場で重合・硬化させるという研究代表者独自の新しい概念を実証し、生体機能の強化、改善を実現できた。生体としては歯の組織に限定しているものの、生体と合成高分子材料との界面で生じる様々な生体反応、組織壊死、材料の劣化、あるいは人工補綴物の脱離などの問題を解決する手段を提供できた。生体組織内に合成高分子と生体分子との複合体を形成させることは、結合のみならず機械的強度や耐酸性の向上など、これまで実現できなかった人工物による生体機能の強化という新しい考え方を歯学領域に提供した。これにより歯科治療法に大きな変革を与えることが可能になった。特に中国のように歯科における材料科学が未成熟な国に対して、世界でもトップレベルに位置する情報を教示できたことは今後の日本の歯科材料学の発展にも大きな貢献といえる確信する。
|