研究課題/領域番号 |
03045025
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
金子 昌生 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90107805)
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研究分担者 |
張 漢国 中国医科大学, 附属第一医院, 助手
徐 克 中国医科大学, 附属第一医院, 助教授
王 長龍 中国医科大学, 附属第一医院, 教授
何 芳顕 中国医科大学, 附属第一医院, 教授
加藤 俊彦 浜松医科大学, 医学部, 助手 (00185852)
岡和田 健敏 浜松医科大学, 医学部, 講師 (90169160)
高橋 元一郎 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (20115489)
青木 伸雄 浜松医科大学, 医学部, 教授 (10109762)
ZHANG Han-guo First Hospital of China Medical University, Assistant
XU Ke First Hospital of China Medical University, Associate Professor
WANG Chang-lung First Hospital of China Medical University, Professor
HE Fang-xian First Hospital of China Medical University Professor
中村 達 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (00090027)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1993年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1992年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | バッド・キアリ症候群(BCS) / 疫学調査 / 食習慣 / BCS動物モデル / ラミナリア狭窄器 / 画像診断学的介入治療(IVR) / 経皮的腔内血管形成術(PTA) / 拡張型金属ステント(EMS) / Budd-Chiari症候群 / Balloon angioplasty / Metallic stent / 膜様狭窄 / 膜様閉塞 / 区域性狭窄 / 区域性閉塞 / BuddーChiari症候群 |
研究概要 |
近年における画像診断法の進歩は著しく、Budd-Chiari症候群(BCS)の診断の正確性は向上してきている。日本の全国調査からみた門脈血行異常症の人口100万対有病率のうち、特発性門脈圧亢進症は9.2,一次性肝外門脈閉塞症は1.1,BCSは2.4と推定されている。また、日本病理剖検輯報によれば総剖検例の約0.02%がBCSで、稀な疾患といえる。したがって日本の大学病院でも1年間に一人も新患がないこともある。中国においてはBCSに対する全国的疫学調査は行われていないが、大きな病院では比較的多数の患者が治療を受けており、有病率は日本より高いと推測される。厚生省のBCS研究班の診断基準に基いて中国の複数の病院のカルテから、15歳以上のBCS患者54名(男33名、女21名)をリストアップし、自覚症状、他覚症状、血液検査所見について調査を行った。分析対象の推定発症時年齢は平均男30.3歳、女28.7歳であり、男女比は1.57で男に多かった。自覚症状は男女とも腹部膨満感と下肢の腫脹が75%以上にみられ、男では下血、吐血、腹痛が、女では腹痛、食欲不振が比較的多かった。他覚的には、肝腫脹、脾腫、食道静脈瘤、下肢の浮腫、胸腹部等静脈怒張などが50%以上の者に認められた。血液検査では低アルブミン血症と貧血が目立ち、血小板数の少ない者も比較的多かった。食習慣調査では、BCS患者の対照群として循環器系および消化器系患者各14名を、性、年齢を対応させて比較検討した。BCS患者の方が両対象群より食品摂取回数が多かったものはいも類で、少なかったものは干豆腐、朝食の米、豚肉、野菜類であった。飲酒とは関連がみられなかった。 BCSは稀な疾患であるが、致死的なためBCS研究に際して実験的BCS動物モデルを作製することの意義は大きい。そのため、ラミナリアを膨張材としてプラスチックリングを外殻とするラミナリア狭窄器を試作し、ラットの肝上部下大静脈(SIVC)に狭窄をつくることに成功した。SIVCの狭窄、閉塞は下大静脈造影で確認し、側副血行も観察され、門脈圧は対照群に比べて有意に高かった。病理組織学的にも人間の場合と類似の所見が得られ、今後BCS動物モデルとして基礎的研究に応用し得ると考えられた。 中国医科大学におけるBCS患者32名に対するInterventional Radiology(IVR)として、Percutaneous Transluminal Angioplasty(PTA)のみ(前期)およびExpandable Metallic Stent(EMS)を加えたもの(後期)について、62〜32ヶ月(長期)および30〜15ヶ月(中期)の経過観察した結果を報告する。患者は男26名、女6名で、術直後、播種性血管内凝固症侯群で死亡した症例以外はすべて健在である。 SIVCの病変は、膜状狭窄31.2%,膜状閉塞44%、区域性狭窄6%、区域性閉塞18.8%であった。 前期の21名の症例では、18例に対してはSIVCの狭窄または閉塞に、3例には右肝静脈の拡張のためバルーンカテーテルを用いたPTAを初回治療として行った。初回術後4、8、12、24、25、29ヶ月に再狭窄を来し、1〜3回のPTAを施行して拡張に成功した。他の6例に対しては、初回術後16、19、20、23、26、26ヶ月の再狭窄に対してEMSを施行した。そのうちの1例にはEMS挿入後15ヶ月にstent in stentを行って、開存に成功した。 後期のEMSを始めから使用した11症例では、PTAのみより狭窄または閉塞の拡張は十分に行われ、狭窄部位の切れ込みは完全に消失しており、血管壁も平滑である。再発率もPTAのみの群に比べて少ない。EMS後血管造影で観察した6例の中、1例では石灰化した血栓の消失が11ヶ月後にみられ、他の2例を含めた開存3例では内膜肥厚のためやや狭窄を認めたが、1例にPTAを施行したのみである。 結論的にはPTAのみよりEMSを最初から使用することが望ましい。しかし、血栓溶解剤の併用や、EMS使用群ではより長期の観察が必要と考えられた。
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