研究課題/領域番号 |
03045044
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
吉沢 四郎 中央大学, 商学部, 教授 (90055088)
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研究分担者 |
YUPHA Klangs タマサート大学, 社会学・文化人類学部, 助教授
SUVINAI Porn タマサート大学, 経済学部, 助教授
PRASERT Chit タマサート大学, 政治学部, 教授
酒井 由美子 中央大学, 法学部, 助教授 (60196053)
斉藤 優 (斎藤 優) 中央大学, 経済学部, 教授 (40055116)
鶴田 満彦 中央大学, 商学部, 教授 (50055133)
桐山 昇 中央大学, 商学部, 教授 (80177964)
高柳 先男 中央大学, 法学部, 教授 (70055169)
PRASERT chittiwatanapong Assoc.Professor, Faculty of Political Science Thammasat Univ.
BANYAT Surak タマサート大学, 経済学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
1993年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1992年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1991年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 国際公共財 / 国際貢献 / 平和 / 民主主義 / 環境 / NGO / インフラ整備 / 人材育成 / ムスリム / ODA / 無償援助 / ロイヤル・プロジェクト / 水資源 / 水利組 / 環境問題 / 有償援助 / インフラストラクチャ- / 都市・農村の格差 / 人間育成 / 環題問題 |
研究概要 |
平成5年度は本研究の最終年度に当たるため、2つの研究計画を遂行した。1つはこれまでの調査研究のなかで欠落した資料の収集のための現地での補足調査であり、2つはタマサート大学側研究者を招聘して、共同セミナーを開催し、研究成果の発表と総括討論を行うことであった。 第1の補足調査は、10月31日〜11月7日までの政治、経済、社会の各班の主査がバンコク、コーンケーンケーンにおいて実施した。最初にタマサート大学で両大学研究分担者による研究協議の後、政治班はバンコク市内のNGO調査(ドアン・プラティープ財団)、スラム(クロントイ)視察、経済班は日系企業(MINEBEA-Bang Pa-in工場)調査、消費市場、アユタヤ歴史研究センター調査を実施した。社会班はコーンケーン地域で日本ODAのプロジェクトである東北農業開発センター(無償協力、12.8億円、1987-88年)、東北大規模苗畑センター(無償協力、15.8億円、1993年)を調査し、さらに小規模潅漑(有償協力)に関連する2つの村落(サカエオ村、ラオ村)の村落農家調査を実施した。 第2の中央大学、タマサート大学による国際共同セミナーは、これまでの3か年にわたる共同研究の総括を意図したもので、12月17日、中央大学で開催した。中央大学側3名、タマサート大学側3名が報告し、総括討論を行った。その際日本ODAの実施機関である国際協力事業団(JICA)のスタッフ、他大学の研究者も参加した。研究報告および総括討論のなかで指摘された日本のODAについての論点は次の通りである。 1.東西冷戦構造解体後の世界のなかで日本のODAは国際公共財として、また国際貢献の手段として重要なものとなっており、また国際貢献の手段として重要なものとなっており、「政府開発援助大綱」にもとづいて、平和、民主主義・人権、環境保全に貢献することが必要である。 2.タイにおける日本のODAは、国内インフラ整備、農業開発などに貢献し、タイ国近代化にかなり有効に利用されてきた。もちろんタイ経済の発展は膨大な外国資本の直接投資、外国の援助、タイ自身の努力があって実現したものであり、日本ODAはそれら複合的要因の1つである。しかしタイ経済発展の過程で、日本ODAは日本からの直接投資がなされ易い環境を直接、間接に醸成してきたといえる。海外直接投資の増大は工業化と都市化を促進し、それがまたODAニーズを創出するというように相捉関係が見られた。 3.しかしタイにおける工業化はバンコクへの一極集中によって過密、公害、地域格差など大きな社会問題を発生させ、マル・デベロップメントと批判されるような事態を生んでいる。開発主義と商業主義の暴走は農村漁村にまでおよび、自然環境の破壊が進行し、森林減少、離農、小漁民の困窮化がおこっている。これらの問題解決に日本ODAが貢献すべきであり、その場合NGOとの連携協力が必要になるだろう。 4.日本ODAの経験のなかでの問題点には、事前調査の不徹底、要請主義による現実無視、たとえば研究体制がないのに研究センターを建設したり、人材が用意されていないのに高度な器具機材を供与したという失敗があった。また水産試験場が開発した技術が企業のインタレストにもとづいて運営され、環境問題を発生させているケースもあり、環境重視の援助が強く要請されている。 5.タイはすでに国民総生産が2,000ドル水準に到達し、1993年度から無償協力は供与を終了する段階になった。その意味で経済成長に成功したタイは、援助受け入れ国から援助する国になる「転換期」に立っており、タイで経験した「発展への援助活用」のノウハウをもって、タイがラオス、カンボジアなど周辺国に援助する段階を迎えている。この「南南援助」を日本が支援することが重要な課題になるだろう。アジアの新秩序を形成する上で、アジアの持続的経済成長をはかるために、インフラ整備と人材育成に日本の継続援助が必要であろう。
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