研究分担者 |
MICHAEL Reic カリフォルニア大学バークレー校, 労使関係研究所, 教授
DAVID STERN カリフォルニア大学バークレー校, 労使関係研究所, 教授
CLAIR BROWN カリフォルニア大学バークレー校, 労使関係研究所, 教授
中田 喜文 同志社大学, 文学部, 助教授 (50207809)
中尾 武雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (10065865)
石田 光男 同志社大学, 文学部, 教授 (40121587)
香川 孝三 同志社大学, 文学部, 教授 (20019087)
竹中 正夫 同志社大学, 神学部, 教授 (60066074)
REICH Michael University of California, Institute of Industrial Relations, Professor
STERN David University of California, Institute of Industrial Relations, Professor
BROWN Clair University of California, Institute of Industrial Relations, Professor
STERN David カリフォルニア大学, バークレー校・労使関係研究所, 教授
REICH Michae カリフォルニア大学, バークレー校・労使関係研究所, 教授
BROWN Clair カリフォルニア大学, バークレー校・労使関係研究所, 助教授
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研究概要 |
1.品質のよい製品を生産することはアメリカでも日本でも共に同じ目標になっている。そのために改善運動にとりくんでいる。アメリカではKAIZENは英語として適用する言葉となっている。ただその内容が日米で次のように相違している。(1)アメリカ地元企業,アメリカに進出した日系企業では,改善運動では品質向上だけを目的としているのに対し,日本の企業では品質向上とともに要員合理化を含んでいる。もしアメリカで要員合理化を含めれば,直ちに改善運動への反対が組合から提案されるであろう。組合員が自らの雇用不安を招く改善運動に協力するはずがないからである。ところが,日本では要員合理化をしても即解雇にはならないことから,改善に対する反対は生じてこない。 (2)改善を進めるシステムとそれを受け止める人事・賃金制度が大きく日米で異っている。日本では改善に協力をすれば,それに応じて高い賃金をもらえるシステムになっている。つまり人事考課利度が生産現場の労働者にも適用されており,改善を進める上での協力度や能力差が賃金に反映するようになっている。これが改善をやろうという生産現場の労働者に大きな刺激となっている。ところが,アメリカ地元企業,日系アメリカ企業とも,生産現場の労働者には人事考課制度は適用されていない。仕事ぶりに合わせて賃金を決めることができないシステムになっている。仕事(job)に応じて賃金が決められており,その仕事についているかぎり,どのような仕事ぶりであっても同じ賃金がもらえるシステムになっている。改善へのインセンティブがない。したがって改善への取り組みが弱くならざるをえない。アメリカでは労務管理の方法として,失敗した者やミスをした者に対して処罰をすることによって管理をおこなうのが基本であり,人よりすぐれた仕事ぶりや能力を発揮することを刺激するシステムをもたない。これは生産現場の労働者の場合に明白である。 2.協約の解釈・適用問題は苦情処理や任意仲裁制度で処理され,団体交渉や労使協議にはゆだねられない。苦情処理は団体交渉の補完であり,団交の結果締結された協約の有効期間中は団交がなされず,苦情処理で紛争を処理する。したがって労使協議で紛争を処理することはないというのが,日本でのアメリカの苦情処理制度の理解であった。しかしこの理解は誤りであることがヒヤリングの結果分かった。日本では労働協約の中の1つの章で労使協議の規定をもうけているが,アメリカにはそれがない。しかし公式または非公式に労使が議論をする場がもうけられている。そこで協約に定められていない事項や協約に定められてはいるが,その解釈や適用についての実務的なつめをおこなっている。本来苦情処理にかかるような事項が労使の協議で検討されている。このことは協約の有効期間中苦情処理だけで紛争を処理することが不可能な状況になってきたことのあらわれではないかと思われる。日本では個々人の苦情や協約の解釈・適用問題でも団体交渉や労使協議でも取り扱われており,日米の接近現象がここにみられる。 3.先任権の構造を理解することはアメリカの労使関係を知るキーポイントである。ところが日本ではこの問題についての研究が不充分なままである。協約の条分だけでは分からない。その運用にまでさかのぼって研究する必要がある。同じような似た条文でありながら,工場によってその運用が異なることを発見した。ポストがあったとき,それを公開公募し,応募者が複数いたとき先任権順にそのポストにつける。そうなるとそのポストをどういう風してうめるのか。永遠に公開公募をつづけていくのか。そういう企業や工場もあるが,3〜4回目までは公開公募していくが,それ以後は経営側の裁量であったポストをきめていく企業や工場もある。労働組合と使用者との力関係によってきまっていくのではないかと思われる。先任権が昇進,配転,職場配置にどのような効果をもつのか,その運用原理をつかむのが,今後の最大の課題であることが明らかとなった。
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