研究課題/領域番号 |
03045047
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
大久保 研之 (1992-1993) 福岡大学, 医学部, 助手 (40194097)
濱崎 直孝 (1991) 福岡大学, 医学部, 教授 (00091265)
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研究分担者 |
森 朗 福岡大学, 医学部, 大学院生
JENNINGS Mic テキサス大学, 医学部, 教授
濱崎 直孝 九州大学, 医学部, 教授 (00091265)
JENNINGS Michael l. University of Texas, Medical Branch, Galveston, U.S.A.
MICHAEL L.Je テキサス大学, 医学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1993年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1992年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1991年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 赤血球膜 / バンド3蛋白質 / 陰イオン透過機構 / 構造機能相関 / プロテアーゼ感受性 / コンフォーメーション変化 / 立体構造予測 / 阻害剤結合部位 / 細胞膜の物質透過 / 陰イオン透過の分子機構 / 透過活性中心 / Hydrophilic connector loop / 膜蛋白質の高次構造 / Transmembrane spanning region / 陰イオン透過系 / DIDS / ピリドキサルリン酸 / NaBH_4 / 1次構造決定 |
研究概要 |
本研究は、赤血球膜の陰イオン透過体バンド3蛋白質の機能と構造の相関に主題を置き、蛋白化学的手法を用いた日米二つの大学施設で研究を進め、ほぼ予定通りの成果を上げることができた。その内容は以下の通りである。 1.陰イオン透過に関与しているグルタミン酸残基の同定('91-'92) Texas大学のJennings教授は、陰イオン透過を阻害する蛋白修飾剤WoodwardreagentKが結合するGlu-681を蛋白化学的に同定し、これがプロトンの共輸送にも関与しているのではないかと示唆した。このグルタミン酸は陰イオン透過機構に関与するアミノ酸残基として初めて同定されたもので、膜貫通ドメインの細胞質寄りに存在していると考えられる(J.Biol.Chem.(1992)に発表)。 2.膜内におけるバンド3蛋白質の存在様式('91-'94) (1)福岡大学の我々のグループでは、プロテアーゼ処理に対する感受性を利用して、バンド3の膜内二次構造の解析を行った。遊離したペプチドは逆相HPLCにて分離し、アミノ酸シークエンサーにて配列を同定した。トリプシンによる消化では、膜をアルカリで前処理すると、そのアルカリ強度に比例して膜の表面に露出していると思われるhydrophilic connecter loopsが上清に遊離してきた。この現象は、pHの上昇に伴い蛋白質の立体構造がより消化を受けやすい状態へ変化したと考えられ、nativeな状態の蛋白質ではこれら遊離した部分は他の領域との相互作用によりcompactな(プロテアーゼ処理に抵抗性の)構造を取っているものと思われた(J.Biol.Chem.(1992)に発表)。 (2)(1)のデータをはじめとして、キモトリプシン、ペプシンなど他のプロテアーゼでも同様な実験を行い、それらの結果を総合して、実際にリン脂質二重層に埋もれている領域(消化後に膜分画に残っているペプチド)と膜表面に露出している領域(消化によって上清に遊離してくるペプチド)を分ける作業に入った。いくつかのプロテアーゼは組み合わせて用い、最終的に逆相HPLCで分離したペプチドの全ては、アミノ酸シークエンサーで配列を決定していった。その結果現行のhydropathy plotによる立体構造の推測とは合致しない領域、中でも膜貫通ドメインと思われていた領域にはプロテアーゼ処理によって上清に遊離して
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くる部分があることが判明した。これはバンド3のみに当てはまる特殊な事ではなく、他のいくつかの膜蛋白質(例えばGLUT1やRhD抗原)でもhydropathy predictionに合わない領域が見いだされている。この様な部分は、立体構造上少なくともメディウムに接して存在すると考えられ、単純に膜に埋もれているとは考えにくい。この仕事は現在も進行中であり近日中にその一部を発表予定である。 膜蛋白質の構造解析に関する蛋白化学的方法論は未だ確立されていない。特に膜貫通領域はその疎水性や相互作用の多様性から分離が困難で、X線結晶解析やNMRのデータを待つしかないことが多いが、本研究で我々が行った手法は今後他の蛋白質に対しても応用可能であると考えている。 3.特異的阻害剤H_2DIDSの結合部位の同定('92-'94) 陰イオン透過の阻害剤として古くから知られているH_2DIDSは、同時に二つのリジン残基と反応する事ができ、バンド3分子内に架橋を形成する。このことを利用すると、二つのリジン残基を含む膜貫通ドメインとその空間的位置関係が推測され、陰イオン透過に関わるpore内部の情報が得られる。我々は[^3H]H_2DIDSを用いて赤血球をラベルし、標識されたペプチドを、上記2.で得られたプロテアーゼ消化の情報をもとに上清に遊離させる事に成功した。逆相HPLCにて単離精製した架橋された二つのペプチドは、アミノ酸配列決定と組成分析とを行い、H_2DIDSが修飾していたのはLys-539とLys-851であった事を証明した。Lys-851は、以前我々がピリドキサルリン酸のアフィニティ標識部位として同定した[Kawano et al.(1988)J.Biol.Chem.263,8232-8238]ものと同じリジンであった。Texas大学のJennings教授は、H_2DIDS修飾に還元メチル化を組み合わせた実験から我々の結果を支持するデータを提供した。従ってこの二つのリジン残基は、陰イオン透過に関わる領域(おそらくporeを形成)の中にあり、H_2DIDSの分子構造からは13Aの距離内にあることが示唆され、またpore内部の膜外側に近い領域に存在しているのではないかと推測された(J.Biol Chem.(1994)に発表)。 以上の成果は'93年8月のGordon Research Conferences(プリマス、米国)においても、大久保、濱崎、Jenningsが発表した。 隠す
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