研究概要 |
本研究では微量元素と大腸発癌との関連性を,青森県内50地区の飲料水中の微量元素量とそれに対応する精度の高い大腸癌罹患率との関連性をみることで検討した。 研究方法は以下のように行った。1)1991年8月10から15日青森県内50地区の上水場の水を500ml採取し,高周波誘導給合アルゴンプラズマ発光分光分析装置(日立社製)を用いて27の元素を測定した。測定は1検体につき3度測定し、その平均値を最終的な測定値とした。なお上水場の選定にあたってはその基準を,少なくとも現在の状態で10年間以上給水を行い,かつ2万人以上の対象人口を持つ,とした。2)青森県の主要医療施設120で1982年から1987年までの6年間の大腸癌罹患調査を行い,それより今回飲料水を収集した地区の同期間の訂正罹患率(1985年の国勢調査による日本人口を基準人口とした)を算出した。なお得られた罹患者と死亡小票の死亡者の不一致率は4%ときわめて高い精度を有していた。その結果,各微量元素量と大腸癌罹患率の間にはいずれも有意な相関はみられなかった。各々の相関係数は負の大きい方から順に,Cuー0.20,Pbー0.16,Snー0.15,Seー0.14,Caー0.14,Tiー0.14,Auー0.14,Teー0.14,Pー0.13,Srー0.13,Kー0.11,Hgー0.10,Mnー0.09,Cdー0.08,Coー0.08,Asー0.07,Mgー0.04,Beー0.04,Feー0.02,Znー0.01,Niー0.01,Naー0.00,Crー0.00,V0.01,B0.05,Al0.22,Ba0.27であった。以上より大腸発癌して抑制的な関連がある元素としてCu,Pb,Sn,Se,Ca,Ti,An,Te等,促進的な関連がある元素としてBa,Al等が示唆された。
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