研究課題/領域番号 |
03152026
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯野 四郎 東京大学, 医学部(病)・第一内科, 講師 (30010309)
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研究分担者 |
小池 和彦 東京大学, 医学部(病)・第一内科, 助手 (90234658)
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研究期間 (年度) |
1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1991年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | B型肝炎ウィルスX遺伝子 / トランスジェニックマウス / 肝癌 / トランス活性化 |
研究概要 |
ウイルスのトランス活性化遺伝子であるB型肝炎ウイルスX遺伝子を、その固有の制御領域のもとに導入してトランスジェニックマウスを作製した。宿主遺伝子中への組み込み場所の異なる、独立した3系統のマウスが得られた。X遺伝子の発現をRNAレベルで検索すると、肝、腎、精巣で高い発現が見られ、さらに、他の全ての臓器で低レベルの発現が認められた。肝においては、免疫沈降法にて予想されたサイズ17KDのX蛋白が検出された。組織学的には、約2カ月齢から肝の中心静脈周囲に空胞化を持つ肝細胞群が出現してきた。これらの空胞はPAS染色陽性で、glycogenと考えられた。組織上、肝細胞壊死あるいは炎症反応は全く認められず、また血清GPT値は12ヶ月齢まで正常であり、肝組織の壊死は起こっていないと考えられた。オスマウスで約13ヶ月齢、メスで17ヶ月齢をピ-クとして肝腫瘍が発生した。我々の使用したCDー1マウスでの肝腫瘍発生率は数パ-セントであるが、このトランスジェニックマウスでは、85%のマウスで肝腫瘍の発生が認められた。また、発生した肝腫瘍は、アデノ-マ、肝細胞癌の組織像を呈していた。また肝癌中には高度のX遺伝子mRNAが検出され、その発生頻度と並んでX遺伝子がこのトランスジェニックマウスでの肝発癌の原因であることを示していた。これらのデ-タは、生体内においてX遺伝子が癌遺伝子類似の遺伝子として働くこと、およびHBV自身が肝発癌に直接的に関与していることを初めて示すものである。このマウスにおける細胞癌遺伝子のトランス活性化を検討中であるが、現在のところHーras、mycなどには発現の増加は認められていない。 生体内においてHBVーX遺伝子が癌遺伝子類似の遺伝子として働き、肝癌を誘発することがトランスジェニックマウスの系を使用して示された。比較的遅い時期に肝癌が発生したことは、ヒトにおける肝発癌と同様である。今後は、X遺伝子によっていかにして肝癌が誘発されてくるかを分子レベルで明らかにしてゆくつもりである。
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