研究概要 |
近年、PG類の抗腫瘍活性に関する研究が大きな注目を集めているが,われわれは有機化学の立場からいち早く参加し、分子設計に基づく研究試料の供給とともに新規制がん性PG類の合成および活性発現機構の解明を目的に研究を続けてきた.本研究者らは、これまで最強の抗腫瘍活性をもつプナグランジン4をはじめ数多くの抗腫瘍性PG類緑体を化学合成したが中でも本研究者独自の合成法により案出された人工類緑体△^7ーPGA_1は,その活性模様が△^<12>ーPGJ_2に極似し、△^<12>ーPGJ_2とともに、現在生化学分野の研究推進をになう重要な標準化合物の一つとなっている。また本化合物の実用医薬としての臨床応用研究も精力的に進められている。本研究者らは、遷移金属触媒反応により上記△^7ーPGA_1の効果的合成の鍵となる光学活性(R)ー4ーヒドロキシー2ーシクロペンテノンの大量供給法を確立するとともに新たな亜鉛ア-ト錯体による兵役付加反応/アルデヒド捕捉連結法を開発し、待望の実用的PG供給プロセスを完成することができた。また、上記合成プロセスにより十分に供給される△^7ーPGA_1を用いて生体関連求核剤との相互作用を検討し,PGA_1との対比をもとに、△^7ーPGA_1のもつ交差共役ジエノン構造特有の反応性を明らかにした。さらに上記研究と関連して強力ながん転位防止作用をもつプロスタサイクリンの活性発現機構の解明と関連して,この化合物が生体内で最初に作用すると考えられるプロスタサイクリン受容体の構造研究を行ない受容体タンパク質捕獲用有機探索子の設計および合成に成功した。本探索子を用いて光親和性標識法を試み,プロスタサイクリン受容体タンパク質の同定に成功した。本研究は有機合成を機軸としたPG類の設計と合成の研究であり,したがって本研究経費の大部分は多彩な合成反応剤なドの購入にあてられた。また不安定中間体の保存用機器の購入にその一部があてられた。以上、本研究の目的は十分に達成されたと考えている。
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