研究概要 |
ヒト膀胱がんのがん抑制染色体の同定を目的としてpSV2neo遺伝子で標識した正常ヒト線維芽細胞由来の7,9,11,12番染色体を微小核融合法によりヒト膀胱がん細胞株H-15細胞に移入した。11番染色体移入クロ-ンでは,5回の移入実験によって得られた20クロ-ンにおいては,細胞形態の顕著は変化(Flat)が認められ,そのうち15クロ-ンは早期の段階で老死化した。残る5クロ-ンは,Flatな細胞と親細胞と同様な形態を示す細胞とが混在していた。また,7,9,12番染色体導入クロ-ンの細胞形態は親細胞と同様の形態と増殖速度を示し,クロ-ニング後も老死化することはなかった。現在までに,細胞老死化にかかわる遺伝子はヒト1番および4番染色体に存在することを示す報告がなされているが,上述の結果は,細胞老化にかかわる遺伝子がヒト11番染色体上にも存在することを示す。 放射線照射により断片化したヒト3番染色体をヒト腎細胞がん細胞株RCC23に導入した。その結果,D3S22〜H3S30領域(3p25)およびD3F15S2〜D3S30領域(3p21)を含む染色体を導入した場合において,細胞形態の変化ならびに細胞増殖速度の低下が認められ,これらの領域にRCC23細胞の腫瘍形質抑制にかかわる遺伝子(群)の存在が示された。この領域は,ヒト腎細胞がんにみられる特異的染色体欠失領域であった。 Kirsten肉腫ウイルス形質転換NIH3T3(DT)細胞の増殖抑制にかかわる遺伝子は1qcenー1q25に存在することが示されているが,RTーAluーPCR法により,この領域に存在し,発現されているDNA断片を2クロ-ン得た。このクロ-ンをプロ-ブとして,コスミッドクロ-ンのスクリ-ニングを行う予定である。
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