研究概要 |
腫瘍免疫における抗イディオタイプ(Id)抗体の応用に関し基礎的検討を行なった。抗Id抗体を利用し血中腫瘍関連抗原(TAA),あるいは抗TAA抗体の測定法の開発(J.Clin.Lab.Analysis 5:14,1991)あるいは,抗原ー抗体反応におけるconformational structureの解析などに成果を得た。一方,抗Id抗体をantigen specific immunomodulatorとして用いたactive immunotheropyは新しい癌免疫療法の可能性をもっている。そこで多数確立した抗Idモノクロ-ナル抗体(MoAb)を利用し,イディオタイプ・マッピング,抗Id抗体の誘導する免疫応答を検討した。その結果,腫瘍関連抗原系においてもイディオタイプネットワ-クが存在することを癌胎児性抗原(CEA)系を用いて報告した(Cancer Res.51:2599,1991)。CEA上のペプチドをエピト-プとするMoAb(Ab1)を用いて作製した抗Id MoAb(Ab2)のなかに血清学的に抗原の内部イメ-ジ(internal image)を有するものが存在していた。すなわちinternal image保有抗Id MoAb M7ー625(Ab2)はAb2特異的抗・抗Id抗体(Ab3)を誘導し,このAb3は(1)抗原CEAと反応(binding assay,Western blot analysis),(2)Ab1と抗原CEAとの反応に競合(Ab1 like Ab3),また(3)Ab2がCEAと類似の挙動をとるなどの成績を得た。さらに,この抗Id MoAb M7ー625の可変部領域をクロ-ニングするとheavy chain variable region(V_H)complementary determining region(CDR)2およびlight chain(V_L)・CDR3に抗原CEAと高いアミノ酸ホモロジ-を有することを示唆する成績を得た。internal imageを有する抗Id MoAbはin vivoにおける移植腫瘍細胞に対し,DTH反応を主体とした抗腫瘍効果,ワクチン効果を示した。さらにnu/nuマウスにおいて抗Id MoAbを投与した群のみ,CEA保有細胞のチャレンジに対し抗原に反応する抗体産生を認めた。以上の結果から抗Id抗体を用いることによりidiotype network systemに抗原特異的免疫賦活が可能であり,新しい癌免疫療法(active immunotherapy)の一つとして期待される。
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