研究概要 |
近年,地球規模の環境問題が重大な関心事になってきた。特に,温暖化は海面の上昇や巨大台風の発生をもたらし,その結果臨海地域において種々の災害が生じると危惧されている.本研究では、東京湾において海面の上昇に加え巨大台風が来襲した場合を想定して,波浪・高潮の数値計算を越波や陸上への遡上を含めて行い,浸水域を予測することを目的とした. まず,東京湾における高潮の数値シミュレ-ションモデルを海面摩擦に関する最近の研究成果等を取り入れて作成した.これを用いて,現状水位と海面上昇が生じた場合の水位に対して,伊勢湾台風級およびそれを巨大化した台風について高潮の計算を行った.また同時に,海上風から有義波法を用いて波浪推算を行った.この結果と東京湾沿岸の高潮堤防の天端高から算定される越波・越流量を陸側の氾濫の境界条件として,氾濫水の平面2次元的運動を数値計算し,浸水高や線流量の分布を求めて,浸水被害想定域の予測を行った. 数値シミュレ-ションの結果,東京湾奥における高潮時の浸水予想地域が,海面上昇・台風の巨大化・高潮堤防の天端高によって変化する様子が明らかになった。特に,海面上昇によって,現在は浸水の危険性がほとんどない地域でも,海面上昇後には浸水の危険性が増大するが、浦安地区の危険性が高く,現在検討されている人工バリアを含めなんらかの対策が望まれる. 東京湾におけるケ-ススタディ結果を考察すると,海面上昇にともなう高潮時の危険度は,高潮堤防の天端高を海面上昇程度嵩上げすることで著しく下げることができることになる.しかし,高潮以外にも考えられる重要な諸影響も含め,今後最善の対応策について検討を続ける必要がある.
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