研究概要 |
1.高潮の流動構造:ドップラ-流速計(ADCP)を田辺湾湾口に海底設置して,2カ月間(8月3日ー10月3日)の連続観測を行い,湾口部の流れの鉛直分布の変動を求めた.ADCP設置期間中に行なった湾内STD観測,白浜海洋観測塔の連続海象観測および湾沿岸の水位観測とあわせて解析している.夏期において海水の密度成層が著しい時期には,風が弱くて潮汐流が卓越している時でも,内部潮汐と思われる,流れの強い上下逆転が起こっていた.観測中に台風が5回も日本を通過したが,(台風12号8/20,15号9/9,17号9/14,18号9/19,19号9/27)紀伊水道を直撃したものはなく,田辺湾に高潮は起こらなかった.ただし,ADCP海底設置用架台を改良して,小型底引き漁業区域で長期設置に成功し,前回問題となった内部反射によるノイズの除去に成功したことは,今後の台風時期の長期観測に明るい見通しを与えた. 2.陸棚海況変動と高潮の関係:NOAA衛星赤外画像を取り寄せて,ADCP設置期間の黒潮および分枝流の形態を調べた.フェリ-による水温モニタ-は計器の故障により,満足すべき記録が得られなかった.1990年の高潮(台風20号)の水位変化を解析し,台風高潮は基本的に強制ケルビン波と考えられる例があることを示し,また陸棚の存在により,高次の成分波として自由波も表れることを示した. 3.沿岸高潮数値モデルの改良:田辺湾スケ-ルの2次元数値モデルを作成し,潮流および風成流の数値シミュレ-ションを行ない,観測結果との照合を計った.この時,複雑な海底地形が,干潮満潮で現われたり沈んだりするような場での高潮数値モデルを完成させた.すなわち,exchange depthの方法により,流況におうじて移動境界条件を設定した.一方,開境界条件の設定には,無反射開境界条件,黒潮等の外洋条件を設定できるように改良し,田辺湾における吹送流,潮流のシミュレ-ションを行なった.
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