研究概要 |
1)予測理論の構築 まず多数成分の協同現象の力学的取扱いとしてのSynergeticsを基礎とし,Weidlichらの理論の適用から,社会構造の確率的運動方程式を求め,それがFokkerーPlanckの方程式で表されることを利用し,これに外力としての自然力(時間の関数としての表現)および自然力の制御項など「時間おくれを考慮した時間の関数)を導入して,災害による社会構造変化の予測モデルを定式化した。この運動方程式の数値解から,カオスの発生として大災害が表現されることになるが,その特性はこれらの外力項に依存する。 2)予測理論の適用性 江戸時代の初期における人口増加から,18世紀に入ってから自然災害の頻発に伴って人口が停滞,減少した事実をこの予測モデルによって追算した。とくに,自然力の入力としての災害の対策例の作成とそれによる人口の減少割合を推定し,これらを用いて確率的運動方程式の表現として得られる平均値としての人口の変化を評価することができた。 3)予測理論の一般化 基礎となる運動方程式において外力項のポテンシャル表示を検討し,災害ポテンシャルの力学的な表示を試み,その時間的変化から災害ポテンシャルの増大の可能性を調べた。より一般的な災害ポテンシャルの表示を与えた場合の本予測理論の展開を試み,適当な初期・境界条件の場合の解を検討した。長期のタイムスケ-ルにおける実例として,縄文時代および弥生時代における人口の増加とその停滞および減少について,本予測理論を適用し,災害ポテンシャルとの関係を明らかにした。
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