研究分担者 |
川島 博之 農林水産省, 農業環境技術研究所, 主任研究員 (30161318)
向井 宏 東京大学, 海洋研究所, 助手 (00013590)
杉本 隆成 東京大学, 海洋研究所, 教授 (40004428)
山口 征矢 埼玉大学, 教養部, 教授 (70114220)
小池 勲夫 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30107453)
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研究概要 |
本研究は河口・内湾域の生態系を人為的に管理し、有機物、窒素、リンなどの陸起源物質の制御を行うための方法を生態工学的モデルにより明らかにすることを目的とし、東京湾について検討を行った。 1)東京湾へ流入する有機物量(COD)を各河川別に見積もった。環境庁によると1989年度の東京湾域におけるCOD発生負荷量は355トン/日である。流達率を0.85と仮定すると流入負荷量は300トン/日となり、隅田川、中川、江戸川からの寄与が大きいことがわかった。 2)砂浜や干潟などの表面に生育する付着性微細藻類による無機態のC,N,Pの取り込みを見積もると東京湾干潟における付着性微細藻類によるC,N,Pの取り込み量(トン/年)は各々5.9×10^3,0.89×10^3,0.56×10^2と推定された。これらは藻場による栄養塩の取り込み量に比較し1桁程度小さいが,生態学的制御法の一つとして有効であろう。 3)東京湾干潟に多量に生息するアサリによる粒子状有機物の除去量について見積もった。長さ1600m,幅1mの干潟上でアサリにより濾過される海水量は1日当たり平均14,900m^3と計算された。東京湾にはかつて多くの干潟が存在していた。その海岸線が200km,沖方向への長さが1600mと仮定すると1日にアサリが濾過する海水は約2.9km^3となり,東京湾海水総量の1.8%に達する。東京湾海水中の粒子状有機物濃度は1ー5mgC/1程度であるので、1日に約4ー16トンの炭素が除去されることになる。他の濾過食底生動物の寄与を考慮すると、干潟の浄化能力は人工護岸や岩礁に比べ1桁から2桁大きいと考えられる。 4)東京湾に適用できる生態工学的モデルの開発と検討を行った。生態系のなかで底質と水質、生物の関連性を重視したモデルを構築し、各フラックスの大きさは本研究で得られた成果などをあてはめ検討を行った。
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