研究概要 |
本研究では,日本海側地域で観測されている冬季の降水の高い酸性化と関連して,SO_2の越境汚染の検出や汚染物質の発生地推定のために,(1)トレ-サ-としての硫黄同位体比やフッ化物の利用可能性,(2)長距離輸送中の黄砂粒子へのSO_2の沈着のモデル実験,(3)硫黄酸化物の長距離輸送について検討し,次の結果を得た。 1.トレ-サ-としての硫黄同位体比やフッ素物の利用可能性:日本に飛来した黄砂に見いだされたSO_4^<2->,F^-のCa^<2+>に対する濃度は,その黄砂発源地と推定される地域で採取した黄砂で見いだされた濃度比の6〜10倍以上であり,黄砂の長距離輸送中にそれらが吸着して生成した可能性が高く,F^-は有効なトレ-サ-となると推定された。しかし,硫黄同位体比は中国現地試料を現在分析中であり,結論は出ていない。 2.長距離輸送中の黄砂粒子へのSO_2の沈着のモデル実験:(1)HFの発生方法の確立:中国では,石炭焼燃に伴いSO_2とともにフッ化物が排出されており,大気粒子状物質や降水中に比較的高濃度のフッ化物が検出されている。黄砂粒子状へのHF沈着実験を行うために,多孔質テフロン管による低濃度HFの発生方法を検討し,任意の濃度のHFガスを発生する方法を確立した。(2)黄砂粒子へのSO_2沈着のモデル実験:中国黄土地帯で採取した黄子粒子へのSO_2の通気を行い,黄砂の塩基性度がSO_2の沈着速度に大きく影響することを解明した。 3.硫黄化合物の長距離輸送の可能性:日本へ飛来した黄砂と後退流跡線解析からその発源地と推定される黄地地帯で採取した黄砂の分析結果ら,日本へ飛来した黄砂中に見いだされたSO_4^<2->とF^-は飛来中に黄砂粒子上に吸着されたと考えられ,両イオンの濃度から考えると,それらは長距離輸送されたものである可能性が高い。
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