研究概要 |
前年度に引続き,東京湾表層堆積物とリンの標準化合物を用いて,Change & Jackson法の精度(再現性と添加した化合物中のリンの各分画への分配)について基礎的な検討を行った。ついで同法を東京湾と珠江河口域(中国)の表層堆積物に適用し,各種無機態リン濃度を測定した。 本法による同一試料の繰り返し分析の再現性は,各種無機態リンについて変動係数にして0.6〜3.2%と非常によかった。しかし,添加した標準化合物の各分画への分配については,FeーP及びCaーPの90%以上が予想される分画で検出されるのに対し,AlーPはその割合が75%前後と低く,かなりの部分がFeーPとして検出されていた。この点は今後さらに改良する必要がある。 東京湾及び珠江河口域の堆積物中の各種無機態リンの濃度範囲は次のようであった;AlーP:0.31〜2.43,FeーP:0.26〜5.69,CaーP:2.16〜6.89μg g^<-1>。また,堆積物中の易溶性リンの割合は平均的にみて45%程度であった。東京湾の場合,1M HCIと冷1M NaOHによって抽出される有機態リンが総リンの約10%を占めるので,堆積物中のリンの約55%が生物生産過程へ移行する可能性を持つと考えられた。個々の無機態リンについては,多くの場合,両水域でCaーPが最も高濃度で含まれていたが,FeーPが最大の割合を占める場合もあった。CaーPとFeーPが堆積物に占める割合につい て平均的にみると両水域の間で差があった。珠江河口域ではCaーPの割合が東京湾に比べて大きく,しかも抽出総濃度の80%以上を占める試料が15測点中4例あった。一方,FeーPの割合は東京湾が珠江河口域に比べ大きかった。これらの差は両水域における人間活動,流入無機物質(鉱物組成),堆積環境等の違いを反映しているものと考えられる。これらの点については,今後検討してゆく。
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