研究概要 |
有機スズについては,使用削滅に伴って,その環境中濃度が変化する様子を知るために,時系列的な分析を行った。トリフェニルスズ化合物の東京湾あさり中の濃度は,既に1981年には汚染が存在したことが明らかになると共に,海水中の濃度は,1991年には減少してきていることが明らかとなった。トリブチルスズ化合物は,1990年より使用削減が進んでいるが,海水中濃度は依然して高水準に推移しており,汚染状況に目だった改善が見られないことが明らかとなった。有機スズに代替しつつある,汚汚塗料有効成分について,その動向を明らかとした。代替物質は,亜酸化銅と農薬を配合したものが多く,必ずしも安全であることが言えない。毒性等のリスクを相互比較するためのスコアリングについて検討し,各物質の評点を行った。代替物質以外に,電気分解法や表面張力の巻を利用した防染技術についても情報を集めた。 有機ヒ素化合物については,海産生物中に出現する天然の有機ヒ素化合物について研究を行った。海産生物をメタノ-ルで抽出した後,高速液体クロマトグラフ/ICP質量分析法にかけて,存在する各種ヒ素化合物の定性・定量を行った。海産動物中に多く含まれる物質は,アルセノベタイン,テトラメチルアルソニウムであり,海藻中に多く含まれる物質はジメチルヒ素基を含むリボ-ス及びその誘導体であることが明らかとなった。イソギンチャクの中から,未知のヒ素化合物が検出され,その構造を決定するための単離を行った。推定される構造はアルセノコリン硫酸エステル又はスルホン酸誘導体であった。
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