研究概要 |
係留固定層ー海流利用システムの完成を目的として,海洋での試験を中心に開発研究を行った.(i)係留式海流利用システムの開発:実機の吸着床ユニットの1/4縮尺模型(直径90cm,厚さ15cm)の円盤状のかごの中に繊維状の吸着剤を充填し,これを海流に相当する2ノットの速度で曳航する吸着実験を行った.ユニット表面の水圧分布を計測し,ユニット内の吸着床を透過する海水の流速を計算した.計算値と実測値とはよく対応していることがわかった.(ii)繊維状吸着剤の係留式採取法への適用:繊維状アミドキシム吸着剤を合成し,最適条件では,最大吸着量620μgーU/g/dayで,かつ充分な強度をもつ繊維が得られた.吸着繊維は糸まり状として充填し,約1m/sの海流と接触させた.装置の総括ウラン吸着量に及ぼす,吸着時間,糸まり体の空間率,繊維の吸着速度の影響を明らかにした.繊維表面と周囲の海水間の物質移動係数を考慮してシミュレ-ションした結果は,実験によって得られたウランの吸着量とほぼ一致した.(iii)球状吸着剤の係留式採取法への適用:吸着剤の長期リサイクル使用による性能変化を調べた.硫酸を溶離剤に用いた場合,リサイクルにより若干吸着性能の低下が認められるけれども,平均ウラン回収量は最も高い値を示した.(iv)中空繊維充填装置ポンプ利用システムの開発:アミドキシム基を有する中空糸状吸着剤を合成し,海水からのウラン吸着システムに適用した.曳航,係留をそれぞれ50,889時間,すなわち39日間にわたり行った.アミドキシム中空繊維を充填した係留吸着装置を1m/sの速度で曳航し,一日あたりのウラン吸着量は21μgーU/gを得た.また,アミドキシム中空繊維吸着剤を放射線グラフト重合法によって,大量にかつ均一に合成するために,放射線前照射気相グラフト重合反応装置を提案した.(v)採取システムの設計と評価:これまでの知見と海洋での試験デ-タをもとに,係留固定層ー海流利用システム採取システムの設計とコスト計算を行った.
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