研究概要 |
石炭液化油を現在の消費構造で利用できる製品に変換することを目的として、ミクロ多孔性結晶触媒による石炭液化油の改質反応を検討した。既に昨年度、NEDOL法の1t/dプロセスサポ-トユニットにより、ワンドアン炭から得られた石炭液化油の軽質ナフサ溜分の、ガロシリケ-ト上での反応を検討し、石炭液化油中に含まれる反応阻害物質を明らかにし、さらにこれらの反応阻害物質を洗浄により除去することにより、軽質ナフサ溜分から約60%の収率でBTX溜分が得られることを見い出している。本年度はまず、この反応での成分間の反応性の差の原因を明らかにする目的で、ジメルチルシクロヘキサン類のガロシリケ-ト上での反応挙動を詳細に検討し、有効分子径の小さな1,4ー体は、ガロシリケ-ト上で高い反応性を示すにもかかわらず、有効分子径の大きな1,2ー体や1,3ー体は反応性が低く、ガロシリケ-トの基質形状選択性の影響を受けていることを明らかにした。また、ガロシリケ-トの結晶外表面に白金粒子を担持した白金修飾ガロシリケ-トを新たに調製し、この触媒により、石炭液化油中の有効分子径の大きな成分の反応性が改善できることを明らかにした。次に、軽質ナフサより沸点の高い重質ナフサからの反応阻害物質の除去法を検討し、軽質ナフサの場合有効であった水ーメタノ-ル系溶媒による洗浄は有効ではなく、スルホランのみ特異な洗浄効果を示すことを見い出した。さらに、スルホランで洗浄後の重質ナフサを白金修飾ガロシリケ-ト上で反応させることにより、約50%の収率で芳香族成分を得ることに成功した。しかし、触媒寿命は充分でないのでその原因を検討し、この溜分中に含まれるインダン類からインデン類が生成し、これから容易にコ-クが生成して触媒が失活することを明らかにした。この検討を基に、水素共存下で反応を行わせることにより触媒寿命を顕著に延ばすことができた。
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