研究概要 |
有機金属錯体を石炭直接液化反応の触媒前駆物質に用いることにより従来の石炭液化に用いられる触媒より高い活性を発揮できることを明らかにしてきた。特にルテニウム化合物を用いることにより著しく隠和な条件で石炭液化が行なわれることを明かにした。豪洲褐炭については375℃,3MPaで石炭の転化率90%以上を達成することに成功した。 さらに本年度は水素供与性溶剤の存在下に高性能な高分散触媒のを用いより隠和な条件で液化が行なえるか否かの検討を褐炭から瀝青炭まで4種の石炭化度のことなる石炭を用いて行なった。水素供与性溶剤としてテトラリンを用いて反応を行ったところ,褐炭ではあまり大きな変化が見られなかったが,瀝青炭では軽質分の収量が増加することがわかった。このとき褐炭では水素は触媒が存在するときはガス中の水素が主に石炭へ移行するが,瀝青炭では水素供与性溶剤からの水素の移行が大きな比重を占めることが示された。このことから,瀝青炭の液化においては良好な水素供与性溶剤の調製が極めて重要になることを明かにした。用いた触媒のうちではFeは多量に用いると高い活性を示し,Mo,Ruなどは少量で良好な活性を示した。モデル物質を用いた化学量論的な研究を行ない,炭化水素ラジカルへは水素供与性溶剤からの水素移行が主として起こり,含酸素ラジカルへは触媒上で活性化された水素からラジカルへの水素移行が起こることが推察された。Ru触媒は特に気相の水素の活性化に高い触媒作用をすることを明かにした。 水素供与性溶剤を調製するために必要な触媒に関する試み,石油精製用のCoーMo/Al_2O_3およびNiーMo_2O_3触媒より芳香環の水素化に対するより選択的な触媒の開発が必要なことを見いだした。
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