(1)石炭と溶媒(溶質)分子との親和力パラメ-タ(Coal Affinity Parameter)の実験的同定 本年度は、昨年度で得られた研究成果、即ち、2成分系溶液中において石炭の立体規制が著しく緩和されるという事実に基づき、各種の溶媒(溶質)中での石炭の潜在的平衡膨潤値(Q_<pot>)を実験的に求め、石炭との親和力を評価する新しいパラメ-タ(K_Q;Coal Affinity Parameter)の導入を試みた。この方法では、浸透分子の立体障害に基づく膨潤抑制因子を除去出来るうえに、測定温度下で固体(結晶)である物質に対しても適用出来るため、広範囲の化合物の親和力パラメ-タの同定が可能になった。今後、これらのパラメ-タを用いることにより石炭を各種の溶媒、反応試薬、触媒等と処理する化学変換プロセス開発で、石炭の最適膨潤状態を得るための条件設定が容易になるものし期待される。また、石炭に対する理想的抽出溶媒開発への足掛りが得られた。 (2)溶液膨潤の活性化パラメ-タの実験的同定 本年度は、従来、一定温度での測定に限定されていた溶液膨潤測定装置を改良して、溶媒の沸点温度範囲内で任意の温度下での測定が可能な実験装置の開発に成功した。これによって、石炭を初めて有機高分子物質の膨潤現象、即ち、外部分子の固相中への浸透、拡散現象における活性エネルギ-の同定が可能になった。この種の実験デ-タは、高分子化学の分野でも前例がないため、化学組成の明確な合成架橋高分子化合物(スチレンージビニルベンゼン共重合物)を用いたシミュレ-ションを行ない、高分子鎖の折り畳み状態に関する興味深い知見を得ることができた。今後、これらのデ-タを基に石炭の高分子構造の解明を行ないたい。
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