研究概要 |
本研究では,強相関電子を含む系の物性発現の機構を明らかにするため,鋼酸化物系に対しては,クラスタ-を数値的に厳密に扱う手法を発展させ,主に動力学的な性質を研究した。その際パソコンを大型計算機の端末として,また計算機本体として補助的な計算の遂行に活用した。また解析的に厳密解の得られる新しい1次元モデルを発見し、その物性発現のサイズ依存性を研究した。更に数度の出張により他大学の研究者と有意義な情報交換を行うことができた。以下に具体的な成果を報告する。 1.4スピン相互作用を含む有効モデルにおけるスピン相関関数及びラマン散乱スペクトルの計算。有効モデルを主に4×4の正方格子上で厳密に解き,ラマン散乱スペクトルを計算し、4スピン相互作用が実験結果の理解に重要であることを指摘した。また基底状態のスピン相関において、4スピン相互作用が特徴的な効果を及ぼすことを示した。 2.超対称tーJ型モデルの厳密解。1次元のtーJモデルにおいて、交換相互作用と移動積分が共に距離に2乗に反比例し、しかもその大きさが等しいモデルを提案し、その厳密解を求めた。厳密解は、任意サイズの系に対して可能であり、基底状態はいわゆるGutxwiller波動関数になる。このモデルの著しい特徴は、運動量分布がフェルミ波数で不連続性を示すことである。これは3次元系ではフェルミ流体の特徴としてよく知られているが、1次元では初めて見いだされたものであり、強相関電子系の新しい則面を明らかにしたものといえる。
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