研究概要 |
強誘電性高分子薄膜のおよび機能性分子との複合薄膜の機能高度化を目的として,高分子の中で最も顕著な強誘電性を示すフッ化ビニリデン共重合体P(VDFーTrFE)を主な対象として研究を行ない,次の結果を得た。 1)P(VDFーTrFE)薄膜に断続光を照射して生ずる動的焦電電圧は低温ほど比熱が減少するので,低温ほど大きくなることが明かとなり,低温(10K以下)でも焦電幅射検出素子として利用できることが示された。この測定から求めた比熱と焦電率の温度依存性は3次元,1次元の格子震動と光学震動を考慮した理論とよい一致をみた。 2)よく成長したP(VDFーTrFE)ラメラ単結晶をキュリ-温度のすぐ下の温度で熱処理すると,ボ-リングで単一分安定な60゚および180゚分域構造が形成されることが分かった。 3)P(VDFーTrFE)にビニルカルバゾ-ル(VK)とトリニトロフルオレノン(TNF)をド-プした複合膜では100K以下の低温で光照射すると電子と正孔の光生成確率が他の高分子系よりも著しく増加する。このとき,光電流は未分極膜では著しく小さいが,ポ-リングによって分極の方向を一定方向に揃えた場合にはじめて大きい光電導性が生じることがわかった。N_2パルスレ-ザ-光照射時のパルス応答電流の波形から電子の移動度は10^<-6>cm^2/V.sで移動度は低い。しかし,第二の電子受容体をド-プすると,移動度は著しく増加し,光電流も大きくなる。 4)強誘電性高分子薄膜と複合して機能性有機薄膜の新しい物性の発現を追求するために,光電変換機能をもつ可溶性フタロシアニン(テトラクミルフェノキシ銅フタロシアニン誘導体)とoctadecanol(OD)との1:1の混合LB膜の構造と形態について調べた。LB膜は混晶単結晶薄膜とみなせることが分かった。 5)単分域強透電性高分子単結晶の作製可能性があることが分かった。この微粒子は多くの応用の可能性をもつ。
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