研究概要 |
有機溶媒を含むミクロな多相系から成る酵素反応システムを構築し,その構成成分間の相互作用から生まれる高度な複合機能を明らかにすると共に,新しいバイオリアクタ-としての有用性を実証することを目的に研究を行い,以下の成果を得た. 1.有機溶媒を主体とする媒体中でプロテア-ゼを触媒とするペプチド合成反応を行い,その基質及び立体特異性を明らかにした.特に,アミン成分の特異性が有機溶媒中では水溶液中と大きく変化することを見いだし,また溶媒組成と特異性との関係を明らかにした. 2.プロテア-ゼを触媒とするアミノ酸エステルの加水分解に対する溶媒効果を詳細に検討した.その結果,90%以上の有機溶媒中で酵素活性が保持され,非常に高い立体特異性が発現されることを見いだした.この現象を利用して,各種のアミノ酸の新しい高効率の光学分割法を開発した.さらに,蛍光分光法が有機溶媒による酵素構造の変化を検出する有力な手段であることを見いだした. 3.アルコ-ルデヒドロゲナ-ゼによるカルボニル化合物の還元は,有機合成におけるキラルシントンの製造法として有用である.本研究では,補酵素(NAD,NADH)の再生系とカップリングしたデヒドロゲナ-ゼによるカルボニル化合物の還元反応を行い,酵素の基質特異性,反応溶媒の効果,カップリングの条件等を詳細に調べ,その最適条件の探索とシクロヘキサノンの還元への応用を検討した.
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