研究概要 |
1.研究目的:本研究は、生体内で骨と自然に結合し、しかも機械的強度、破壊靭性、弾性係数、疲労特性などの力学的性質においても骨に近い性質を示す生体活性複合材料を得る基礎的指針を明らかにするために、各種セラミックス、金属、有機高分子材料の表面に、生体活性なアパタイト層を組成、構造、厚さ、下地との結合性などを制御しつつ形成させる条件を明らかにすることを目的とする。 2.研究成果:本研究者らは先に、CaOとSiO_2を主成分とするガラスの顆粒を、ヒトの血液とほぼ等しいイオン濃度を有する36.5℃の擬似体液に浸漬し、その上に基板を置くと基板表面に多数のアパタイト核が形成され、続いて基板だけをアパタイトの飽和濃度を越える量のカルシウムとリン酸イオンを含む水溶液に浸漬すると、アパタイト核が自然に成長していずれの形状のいずれの種類の基板上にも緻密で均質な骨類似のアパタイト層が任意の厚さだけ形成されることを明らかにした。本研究では、アパタイト層の成長速度に及ぼす第2の液の濃度、撹拌、温度の影響、及びアパタイト層の核形成に及ぼす基板の種類の影響を調べた。その結果次のことが明らかになった。i)アパタイト層成長速度(R)は、第2の液のアパタイトに対する比過飽和度(σ)が大きくなるにつれ増加し、その間にR=Kσ^<1.3>の関係が認められた。アパタイト層成長速度は、第2の液を撹拌することによっても、温度を上げることによっても増加した。成長速度の温度依存性から算出された、成長の活性化エネルギ-は、43.2J/molであった。ii)第2の液浸漬後均一なアパタイト層を形成させるのに必要な第1の液の浸漬時間、すなわちアパタイトの核形成に必要な誘導期間は、基板の種類によって大きく異なり、例えば、金属チタン、アルミナセラミックス、シリカガラス、ポリテレフタル酸エチレン、ポリエ-テルスルフオンに対して、それぞれ4,2,1,1,1日であった。
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