研究概要 |
新しい強誘電体薄膜形成技術として光励起プロセスを提案し,チタン酸鉛(PbTiO_3)及びチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O_3:PZT)薄膜の成長を行った。Pb(C_2H_5)_4,Ti(iーOC_3H_7)_4及びO_2を原料に用いたPbTiO_3膜の光励起プロセス(XeーHgランプ)においては,600℃でペロブスカイト(III)配向膜が得られた。酸素源としてNO_2を用いると,530℃でペロブスカイト結晶膜が得らた。いずれの場合も光励起が低温成長化に有効であり,原料の分解や酸化反応に与える光照射効果の違いが成長速度やPb/Ti組成比の変化の原因になる事がわかった。NO_2を用いた場合,得られたPbTiO_3膜の比誘電率は50ー130,誘電正接は0.02ー0.05,抵抗率は10^<10>ー10^<12>Ωcmを示し、O_2を用いた場合より優れた特性を示した。光励起プロセスで得られたPbTiO_3膜はDーEヒステリシスカ-ブも観察されると同時に優れたステップカバレ-ジ特性も示した。PZT薄膜の成長には新たに開発した多元系光励起CVD装置を用いた。原料にはPb(C_2H_5)_4,Ti(iーOC_3H_7)_4,Zr)tーOC_4H_9)_4及びO_2を用いた。成長温度450ー500℃では,光照射の有無によらず得られた薄膜はアモルファスであった。しかし成長速度は150ー250/minとスパッタ膜の場合に比べ2ー3倍程度大きい。得られた薄膜を800℃で3時間アニ-ルすると全てペロブスカイト単一相を有するPZTとなり,無配向の多結晶構造を示した。その結晶系は成膜時のZr/Ti供給比やPb供給量により再現性良く正方晶と菱面体晶系とに制御できることがわかった。アニ-ル後のPZT膜の比誘電率は300,誘電正接は0.002ー0.003であった。成長温度600℃の場合,asーgrownでペロブスカイト構造の(III)PZT配向膜が得られた。Zr/Ti供給比が20/100以上では光照射が成長速度の増加をもたらした。またICP法による分析より,光照射がPb含有量の減少と同時にZr/Ti組成比の増加をもたらす事がわかった。
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