研究概要 |
超高圧システムによる立方晶窒化ほう素(CBN)の創製には、高温(〜1500℃)と触媒の助けを必要とする。本研究では室温で無触媒条件下において、cBN創製を目的とした。それには、結晶構造の周期性に着眼した。すなわちcBNと同じ3枚周期をとる菱面体型窒化ほう素(rBN)を出発物質として加圧することにした。rBNは常温常圧下では準安定であり、これの合成は容易ではないところ、CVD法では非常に簡単にできる。 加圧はダイヤモンドアンビルセルによりおこなった。加圧状態でX線回折とラマン散乱測定とを行ない、また加圧後に回収した試料の電子線回折をおこなった。 X線回折の結果から、cBNの(111)回折線が8GPa付近から出現すること、rBNの(003)回折線強度が3GPaから急激に減少して7GPaより高い圧力では常圧の1/10程度となり20GPaでは消失すること、の2点が明らかとなった。 一方、ラマン散乱実験によると、rBNの6角網面内の伸縮振動に対応するE_2gモ-ドが4GPa付近まで高振動数側にシフトしてそこで消失すること、および3GPa付近から新しいモ-ドが出現するもののこれも8GPa付近で消失することがわかった。 X線回折とラマン散乱の結果は調和的で、4GPa付近からrBNの6角網面のたわみが起こり,同時に進行している6角網面同士の接近と相乗して,ついにはrBN期3配位からcBNの4配位結合が約8GPaで生じたものと考えられる。 なお、blGPaまでのcBN(111)回折線の圧縮は、最初からcBNを圧縮した実験と1%の範囲で一致することがわかり、また、52GPa以上加圧した後ではcBNが回収され、単に室温での加圧でさえもcBNが凍結されることがわかった。
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