研究概要 |
高いガラス転移温度を有する低分子系アモルファス分子材料の創製を目指して、分子内に剛直な骨格を有する新規atarburst分子4,4',4"tri(phenothiazinyl)triphenylamine(TPTTA)を合成し、TPTTAが容易に安定なガラス状態を形成し、高いガラス転移温度(Tg=141℃)を有することを見いだした。また、TPTTAは、よう素ド-ピングにより、室温電導度10^<-5>Scm^<-1>を有するアモルファス有機半導体に変換できることを見いだした。さらに、新しいタイプのアモルファス分子材料の創製の観点から、新規π電子系starburst分子1,3,5ーtris(diphenylーamino)benzeno(TDAB)およびそのメチル誘導体oー,mー,pーMTDABを合成し、TDABは溶融状態を液体窒素により急冷してもガラス状態を形成せずに結晶化してしますのに対し、三種のMTDABはいずれも溶融状態を室温で放冷することにより容易に安定なガラス状態(Tg=46,49,58℃for oー,mー,pーMTDAB)を形成することを見いだした。また、これらの中でpーMTDABは、ガラスを形成する以外に、熱履歴によって三種類の異なる結晶形態をとる特異なpolymorphismを示すことを見いだした。 一方、π電子系側鎖基を有する導電性アモルファス高分子に関して、本年度は、poly(3ーvinylperylene)(PVPe)の電気化学的ド-ピングおよびPVPeーグラファイト複合電極を用いるリチウム二次電池の製作とその特性の検討を行い、PVPeの電気化学的ド-ピングにより得られた高分子が、支持電解質のアニオン部をド-パントとする側鎖ペリレン環の部分酸化されたラジカルカチオン塩であること、その電導度はド-ピング率86%のとき1x10^<-5>Scm^<-1>であること、およびPVPeーグラファイト複合電極を正極に用いた二次電池は、0.8mAcm^<-2>の高い電流密度においても良好な放電電圧の平担性、90%以上の高いク-ロン効率、良好な繰り返し安定性を示すことを明らかにした。
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