研究概要 |
高分子固体の力学物性に及ぼす高次組織および分子運動の影響を定量的に評価する研究の一環として,結晶モルフォロジ-に大きく依存する赤外バンドの波数及び形状変化に着目してこの現象の分子機構を解明すると共に結晶モルフォロジ-評価の新しい分光学的手法を開拓した。また高分子結晶における熱的揺動の性質とそれによって生ずる結晶弾性率の低下について考察した。既にポリオキシメチレン(POM)など一連の高分子についてモルフォロジ-が伸び切り鎖晶からラメラ晶に移る際に分子鎖軸方向に遷移モ-メントを持つ赤外平行バンドが高波数側に大きくシフトしその形状も変化することを示したが,赤外バンドの振動子強度の絶対値側定と理論的考察によってこの極めて特異的なスペクトル変化は高分子結晶の形状とサイズに大きく依存する遷移双極子相互作用によって引き起されることを明らかにした。また平行バンドのプロフィル解析によって結晶モルフォロジ-を定量的に評価できることを示した。POM繊維の結晶弾性率は分光学的手法で求めた理論弾性率に比べて小さく,特に室温以上では理論値の50%程度に減衰する。これは結晶領域における分子鎖の回転的揺動によるものと考え、ラマンバンド幅の温度依存性を2種の力学モデル(siteーhoppingとBibrationーtorsionモデル)に基いて解析し,分子運動に関する種々の力学パラメタ-を求めてPOMの力学的および熱力学的性質との関連性について考察した。 電気的物性に関しては強誘電性液晶における高分子効果を解明する目的で,低分子液晶(M1)とそれを側鎖に有する高分子液晶(P1)について多形構造と相転移挙動を比較考察した。P1において側鎖のmesogenが構成する層状構造はスメクチック相においてもM1の場合に比べて高い規則性を保つことが明らかとなった。
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