研究概要 |
本研究では導電性の期待される積層構造、光機能材料に適した光化学特性の期待される高歪構造を持つポルフィリンの開発を目標とするものである。本年度はビスポルフィリン金属錯体の電気化学的性質と近赤外領域に吸収帯を持つ5Hーフロリン誘導体の合成および物性について明かにした。 1.ビスポルフィリン金属錯体の合成と物性:テトラ(pートリル)ポルフィリン((TTP)と略記する)から容易に得られる積層型ビスポルフィリン、(N,N')ー(CH=CH)(TTP)_2H_2、と2価の鉄、銅、コバルト、ニッケルとの反応で、対応するビス金属錯体を高収率で得た。ビス銅(II)フルオロボレ-ト錯体のCVでは銅(II)/銅(I)の酸化還元が-0.07Vと-0.29Vに観測された。これは二つの銅サイトの相互作用またはコンホメ-ションの異なる異性体の存在を示唆するものである。これらの積層型ビスポルフィリン金属錯体は非常に安定であり、しかもCu^<2+>Cu^<+1>の状態をとる可能性があるので、これを一つのユニットとする高分子物質の作製について検討を重ねている。 2.N^<21>,N^<22>ー架橋ポルフィリンの合成と物性:ポルフィリンの二つの隣接する窒素を架橋したN^<21>、N^<22>ーエテノ架橋ポルフィリンは高歪構造を持つ。これを還元して容易に得られる、N^<21>,N^<22>ー(1,2ージフェニルエテノ)架橋メソテトラフェニルー5Hーフロリンは689nmに極大吸収を示し、そのモノカチオンは792nmに吸収を持つ。しかも、これらは溶液のpHによって可逆的に変化する。これらは半導体レ-ザ-の波長域に相当するので有用である。これらの誘導体は一般の色素が殆ど溶解しないヘキサンにも溶解し(約1wt%)、pHや電位によって吸収帯が可逆的に100nm程度シフトするという点で非常に特徴ある化合物である。
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