研究概要 |
1、我々はすでにマウスチロシナ-ゼcDNAをクロ-ン化しており、一方においてマウスおよびヒトのゲノムチロシナ-ゼ遺伝子の5'側領域をクロ-ン化した。この両者の間には部分時に高い相同性がある。マウスのチロシナ-ゼcDNAとマウス遺伝子の5'側上流配列を融合して,アルビノマウスの受精卵に導入して,トランスジェニック・マウスを作製した場合には、メラノサイト特異的に遺伝子発現がおこることを観察しているが,さらにマウスのcDNAにヒト遺伝子の5'側上流配列を融合して,キメラ遺伝子を構築し、アルビノマウス受精卵へのマイクロインジェクションを行った。その結果有色に転換したトランスジェニック個体を得ることが出来た。又、そのファウンダ-をアルビノマウスと交配し、安定してメラニンを合成し、野生型に近い形質をあらわすラインを樹立することが出来た。このラインのマウスにおいてはすべての組織に導入遺伝子が組み込まれているにもかゝわらず、メラノサイトにおいてのみ細胞種特異的に発現していることが明らかとなった。又、メラノサイトが分化する部位も野生形メラノサイトと同様であった。この結果はヒト由来の調節領域がマウス由来のトランス因子に応答して働くことを示しているものと思われる。 2.一方、マウスのチロシナ-ゼcDNAとマウスの遺伝子5'側上流域を融合したミニ遺伝子を導入する実験において,毛色にパッチ状パタンが生じることがあることが観察された。このような発現をしているマウスをアルビノマウスと交配することによって、この形質がメンデル式に遺伝することが明らかとなった。この結果は導入遺伝子が組み込まれた染色体の部位によっては細胞系譜的に不活性化することを示していると思われる。
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