研究概要 |
野性マウスにおけるC4,S1p遺伝子の重複、欠損を検出するために両遺伝子の転写開始点から約250bp上流に存在するCAGAの繰り返しからなるマイクロサテライト配列を狭むプライマ-を用意した。このマイクロサテライト配列はS1pの方が約60bp短く成っているため、全DNAをPCRで増幅したあとアガロ-ス・ゲルを流す事により両遺伝子の相対濃度からコピ-数の異常が検出される事が期待されたが、実際にコピ-数の異常が知られている数種のインブレッド・マウスを用いた予備実験によりその有効性が確認された。そこで国立遺伝学研究所より供与された日本産、中国産及びヨ-ロッパ産の野性マウスのDNA約200サンプルをスクリ-ニングした。その結果、約80%のサンプルにおいてPCRによる増幅に成功した。日本産、中国産のマウスからはマイクロサテライトの長さのポリモルフィズムは検出されたが、コピ-数の異常は見つからなかった。一方、ヨ-ロッパ産のマウスからはデンマ-ク産の一頭からC4遺伝子の欠損をヘテロに有する事を示唆するパタ-ンが検出された。サザン・ブロッティングによる解析でもこの結果は確認された。このデンマ-ク産のマウスの系統は国立遺伝学研究所に維持されているため、今後ホモ欠損個体を捜しC4遺伝子領域をクロ-ニングし、欠損の範囲、機構を明らかにしたい。以上の結果により、野生マウスにおけるC4,S1p遺伝子の欠損、重複の頻度はヒトの場合よりかなり低い事が判明した。 一方、北米産野生マウスより単離され、C4,S1p遺伝子を5コピ-有する事が示されたw7、及び4コピ-有するw16,w19の三つのH-2ハプロタイプのC4,S1p遺伝子領域を解析した結果,この三種のハプロタイプは互いに極めて類似しておりw16,w19からさらなる重複によりw7が生じたか、又はw7から欠損によりw16,w19が生じたことが示された。
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