研究概要 |
更新世長鼻目ゾウ科,偶蹄目シカ科化石と現生シカ科骨格の生物計測学的調査を北海道由仁町と瀬戸内海周辺地域産のもの,中国の古脊椎動物与古人類研究所,動物研究所,北京自然博物館,天津自然博物館,ロンドンの自然史博物館,パリの国立自然史博物館と栃木県立博物館所蔵のものについて行った. 1.従来,更新世の日本と中国のシカ属化石はCervus fortulorum,C.grayi,C.kazusensis,C.nippon,C.praenipponicus,C.takaoiなどの種の分けられていたが,これらは現生のニホンシカ(C.nippn)の変異の中に含まれることがはっきりした. 2.日本のオオツノシカは中国のものとは別種(Sinomegaceros yabei)や,中国産のある種の亜種(S.ordosianus minor)とされていたが,角の形態などから,別種であると確認できた. 3.日本のナウマンゾウ(Palaeoloxodon naumanii)と同属化石が中国では(P.namadicus,P.naumanii,P.tokunagai)の3種が知られている.これら3種は臼歯の巾や咬板頻度で分けられているが日本のナウマンゾウなどにもこのようなものが含まれる可能性があることが分かった.なお,P.tokunagaiという種名は命名規約上問題がある. 4.北海道の由仁町のマンモスとオオツノシカはそれぞれMammuthus primigeniusとSinomegaceros yabeiであることが分かった.その年代には産出層準付近の火山灰や泥炭から約5万年前であり,日本産としてはもっとも古いマンモスであり,もっとも北から産出したオオツノシカであることがはっきりした.この時代に北海道と本州の間に大型哺乳類の交流があったという新たな生物地理学上の証拠を示した.
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