研究概要 |
パプアニュ-ギニアのオ-ストラロ・メラネシアンとオ-ストラリアに渡ったオ-ストラリア原住民(アボリジン)の起源や他の集団(含モンゴロイド)との遺伝形質の分化等を明らかにすることを目的として、パプアニュ-ギニアのオ-ストラロ・メラネシアンの一言語族(ギデラ族)を対象とした、ウイルス学的かつ遺伝血清学的調査を行った。 ギデラ族の主に成人以降の男女各727人から得た血液サンプルについて、ウイルス学的分析一成人T細胞白血病の原因ウイルス(HTLVー1)抗体、エイズウイルス(HIVー1)抗体、B型肝炎ウイルス抗原(HBsAg)およびC型肝炎ウイルス(HCV)抗体ーならびに血清蛋白質(Hp,Tf,GC,PI,ITI,C6,C7,C8,HF,AHSG,IF,BF,PLG)多型を電気泳動法で決定した。 その結果、1)ウイルスでは、ギデラ族にエイズ抗体陽性者はみられず、いわゆる近代的な汚染はないと考えられた。また、これまでHTLVー1の抗体陽性率はパプアニュ-ギニアの中でもギデラ族の居住する西州が最も低値(1/30=3.3%)を示すことが指摘されてきたが、本研究の結果の1.8%(13/723)はこれよりさらに低値であった。HBsAgとHCV抗体の陽性率(それぞれ11.9%と4.1%)は、これまでのパプアニュ-ギニアやオセアニア全体での報告と同様の高値を示した。一方、これらHTLVー1、HBsAgとHCV抗体の陽性率は、より町に近く近代化の影響を受けている村落で高値を示した。このように、ウイルスの伝幡は生活や行動様式といった文化的な要因に強く規定されることから、ウイルス学的見地から集団の類縁性を検討するには限界があると言える。2)血清蛋白質では、現在、比較すべき集団のデ-タが十分集まっていないので明確なことは言えないが、ほとんど全ての血清蛋白質の多型の頻度分布は日本人の場合と異なり、いくつかの項目ではニュ-ギニア高地人の場合とも異なっていた。現在、デ-タベ-スを作製し他の集団と比較検討中である。
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